【特集 スクールカウンセリング30年】コラム#02 SCがいる意味を伝える|阪口裕樹

阪口裕樹(名古屋市教育委員会)
シンリンラボ 第35号(2026年2月号)
Clinical Psychology Laboratory, No.35 (2026, Feb.) 

1.スクールカウンセラー(以下,SC)として働くことへの恐怖

学校に心理の専門家であるSCが導入され30年。「まだ」30年なのか,「もう」30年なのか。私がSCを始めて約20年,新人時代に,SC導入直後に学校に入った先輩SCから,「話しかけないで,自分のクラスにおかしい子がいると思われたくない」と教員に言われ職員室でじっと耐えていたと聞き,学校現場で働くことに恐怖を抱いた,いわゆる黒船到来と言われた時代のことである。

2.非常勤SCとしての始動

医療現場と並行して,小中学校でのSC活動が開始した。配置の自治体では中学校はSC事業がすでに根付いていたが,小学校では配置が開始すると同時に私の勤務も始まった。先輩の如く当初は先生方から「何してくれる?」「何ができる?」と聞かれ,あたふたした。「SCとしてできること」として,SCの業務内容を紙面にて視覚的に学校に提示し,子どもの観察やかかわりを重ねるうちに依頼が増えていった。

3.学校で働く面白さとしんどさ

学校では子どもや保護者との面接で得られる情報のみならず,教員からの情報や子どもの観察からの情報も得られ,多角的に見立てた上で教員と協働して子どもの支援ができる面白さがある一方,教員にどう伝えると理解してもらえるのかと悩むことも多かった。学校勤務は,他の勤務と比較して,エネルギーの消耗度は格段に違い,気を張り,心身ともに疲労していた。学校には心理の専門家はひとりで,自分で考え判断するしかなく,ひとりで闘うことが疲労に繋がっていたとも実感している。

4.中堅になったもどかしさ

年々SC業務にも慣れ,先生とも円滑に連携できるようになると,虐待や希死念慮等深刻な案件の相談も入るようになり,先生方と一緒に子どもを支えている実感も持てるようになった。その一方で,週1日の勤務から緊急を要する子どもへの即時対応ができないもどかしさを感じた。また,緊急支援も勤務校で数回経験したが,緊急支援発生時他の仕事との兼ね合いからすぐに対応できないもどかしさも感じるようになった。

5.常勤SCへの挑戦

名古屋市では中学校に常勤SCが導入され,「常勤SCとしてやれること」が沢山あると思い,10年前に常勤SCに飛び込んだ。はじめはSC事業導入当初と同じ黒船来航状態で,学校からは異質な者と見られ,煙に巻かれることも多かった。まずは,勤務校にて常勤SCの強みを活かし,相談対応に加え子どもたちと日常的にかかわり,子どもへの全員面談や心理教育,先生方への研修,保護者への講話など予防的取り組みを提案・実施した。緊急対応も即座にでき,格段に「SCとしてできること」の幅が広がった。そして,徐々に常勤SCが浸透していった。本市では専門職がチームで仕事をするためひとりじゃない心強さがあり,加えて非常勤とは違い雇用の安定が心理的な安定に繋がった。

6.今後の課題

名古屋市では常勤SCが浸透したが,最終形ではなく,「常勤SCができること」「常勤SCの効果」などSCの専門性を伝え続けなければいけない。SC事業が始まり30年。市民への周知も広がってきている。一方でSCの予算は国の補助金が1/3で残りは各自治体からである。予算がなければSC活動ができない。学校だけでなく,自治体や社会,市民に,「SCがいる意味」を伝え続けなければSC消滅の可能性もある。それは常勤SCも同じ。その意味でまだ30年。この意識をSCひとりひとりが持ち,SCの専門性を常に考え世に伝え続けることが雇用の安定にも繋がり,継続した学校での子どもの支援に繋がるのではないか。

文  献
  • 諸富祥彦監修(2024)スクールカウンセラーのための主張と交渉のスキル.金子書房.
  • 村山正治(1999)スクールカウンセラーの現状と課題.学習評価研究.
+ 記事

阪口裕樹(さかぐち・ひろき)
名古屋市教育委員会 子ども応援課
資格:公認心理師・臨床心理士
主な著書:『スクールカウンセラーのための主張と交渉のスキル』(分担執筆,金子書房,2024)「スクールカウンセラー及びスクールソーシャルワーカーの常勤化に向けた調査研究」In:文部科学省令和3年度いじめ対策・不登校支援等推進事業報告書(分担執筆,2022),「スクールカウンセラーの常勤化を進めた自治体からの報告」In:日本教育新聞『日本教育』7月号(2025)

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