大人女子のココロ(4)信頼にこたえる術:ソリューション・フォーカスト・ブリーフセラピーとは(続)〈前編〉|伊藤弥生

伊藤弥生(久留米大学)
シンリンラボ 第40号(2026年7月号)
Clinical Psychology Laboratory, No.40 (2026, Jul.)

大人女子のココロ(3)自分の臨床へのギモン&ソリューション・フォーカスト・ブリーフセラピーとは〈前編〉
大人女子のココロ(3)自分の臨床へのギモン&ソリューション・フォーカスト・ブリーフセラピーとは〈後編〉

から続く

やさしく思慮もあり,年齢に縛られず自分らしさを大切に暮らす大人女子。

その笑顔を見ると安心する。でも実は自分はどうありたいか選択したものではないか? 厳しい状況だからこそ。
そして彼女たちの好きなこと。それは自分らしさの表われだが,生きる術でもあるかもしれない。大切なものを軽んじられ自分なんてと思う日々を。

そんな彼女たちの信頼にこたえる支援の術として,ソリューション・フォーカスト・ブリーフセラピー(以下ソリューション)について前回からご説明している。実践編に向けての導入としてである。

前回はソリューションとは何かについてお伝えした上で,何をするのかについて,ソリューションのベースの考えである「中心哲学」と「3つの発想の前提」にそってご説明し,前提1(解決)に関する内容までとりあげた。

表1 中心哲学(再掲)

ルール1うまくいっているなら,変えようとするな
ルール2一度でもうまくいったなら,またそれをせよ(Do more)
ルール3うまくいかないなら,(何か/何でもいいから)
違うことをせよ(Do something different)

※白木(1994),黒沢(2024)を元に作成

表2 3つの発想の前提(再掲)

前提1 解決       解決について知る方が,問題や原因を把握するよりも有用である。
前提2 リソース
    専門家
人は自身の解決のためのリソース(資源・資質)を 持っており,自身の解決(人生)の専門家である。
前提3 変化  変化は絶えず起こり必然である。
小さな変化は大きな変化を生み出す。

※森・黒沢(2002)を一部改変して作成

今回は前提2(リソース・専門家)・前提3(変化)に進み,その上でソリューションはどう動くのかについて基本の面接展開を図表も用いて解説する。このような事情から今号の見出しや図表番号は前回からの続きとして記載している。

3.ソリューションは何をするのか

2)3つの発想の前提(続き)
解決構築に必要なものはどうやって?

ソリューションを端的に表現すれば次のようになる。Clにすでにあるリソースを活かしながら,少しでもうまくやれている部分(例外・すでにある解決)を増幅する形で,Clが最も望む状態(解決)を構築していく。

解決構築に必要なものは,質問を使ってClから引き出していく。

  • Clが最も望むのはどんな状態か(解決像)
  • その望みについてClが少しでもうまくやれたことはどんなことか(例外)
  • 望みに役立つものがClの中や周りにどんなものがあるか(リソース)

これらについて質問を活用する対話で引き出していく。

質問という助け

「な〜んだ,こんなの普通じゃん」
答えはYes & No 。
その通り,質問は突飛なことについてではない。最も望む状態・少しでもうまくやれたこと・役に立ったものなどだ。でもこんなことを聴かれることが普通あるだろうか?

どうなっていたら最もいいかという望み。大事なことであればあるほど,周りの声が大きくなる。

「こうした方がいいわよ」
「あなたはこうするべきでしょ」
「こうするものなんだから」

こんな声に囲まれて,自分が最も望むことなど丁寧に引き出してもらうことなどないのが普通だ。

少しでもうまくやれたことや役に立ったものについてもしかり。反省を求められることはあるが,成功分析を促されることはない。
特に問題の渦中では肯定的なことは眼に入らない。視野が狭まり否定的なことに注意が向く。だから質問という形で引き出してもらうことが助けになる。

クライアントが自分の解決(人生)の専門家
前提2:人は自身の解決のためのリソース(資源・資質)を持っており,自身の解決(人生)の専門家である。

CLへの質問はナラティヴ・セラピーと同じく知らない姿勢注1)で,「教えていただけますか?」と敬意を持って聴く。これは単にマナーなのではない。本人から教えてもらうのが最も妥当だからだ。

よさそうなアドバイスも合わなければ使えない。何の努力もせずに生きて来られた人はいない。ここまで人生をやりくりしてきた実績と,それに役立った自分なりのやり方がある。自分と最もつきあうのは自分だ。本人以上に自分の人生について切実に考えうる人はいない。

Clの解決(人生)の専門家として余人をもって代え難し。だからClに教えてもらう。

注1)a not knowing stance。アンダーソンHarlene AndersonとグーリシャンHarold Goolishianが提唱した。わかったつもりを避け,Clの経験世界をその人自身の言葉で探求しようとする協働的な姿勢のこと。ソリューションやナラティヴ・セラピーをはじめ第二世代の家族療法で重視される。
カウンセラーは一歩後ろから導く対話の専門家

Clに教えてもらうと書くと受け身に見えるが,解決を構築していく対話に導く役割はカウンセラー(Co)にある。Clを自身の解決(人生)の専門家として尊重しつつ導く態度は,「一歩後ろから導く」と表現される。アドバイスをCoから差し出すのではなく,Clが自分の解決に役立つものを見つけていける文脈を作ることが,一歩後ろから導くと表現される。一歩後ろから導くために質問を活用する対話を行う。

質問を活かすには,対話の進め方が何より重要になる。Clの思考の枠組み(認識)や反応に留意し,流れを意識して質問が活きる面接運びをする。今ここで起こっていることを踏まえて展開する対話はジャズに似ている。実際スティーブはジャズ奏者でもあった。

ソリューションにおいてCoは対話の専門家となる。

変化は必然・波及効果(リップルエフェクト)
前提3:変化は絶えず起こり必然である。小さな変化は大きな変化を生み出す。

では解決構築を実際にどう進めるか,次の一歩をどう行くかという話に入ろう。

心理療法において変化と言うと,今後の変化が思い浮かぶかもしれない。行動を起こさないと何も変わらないとも言われる。

一方ソリューションが着目するのはすでに起こっている変化だ。
変化は絶えず起こり必然である,ということは良循環の糸口となる変化がすでにあるということだ。問題となっているパターンと違うことがすでに起こっている。これからももちろん起こるが,すでにある。
そしてこの前提でモノを見ることは,諦めそうな状況でも粘り強く信じて変化を待つ姿勢も生む。

すでにある良循環の糸口

ここで中心哲学のルール2を思い出そう。

ルール2:一度でもうまくいったなら,またそれをせよ(Do more)。

解決構築を進める際,新しく何かを始めなくてもよい。というよりソリューションはすでに起こっている変化,つまり例外(解決のカケラ)を良循環の糸口として活かすことを選ぶ。

問題状況がもっと悪かった時や場面があるということは,そうではない時や場面もあったということだ。その成功要因を活かし,例外を繰り返せばいい。やったこと,うまくいった実績があることはやりやすい。

Clは行き詰まり,時に限界状態で訪れる。光が差すのは早い方がいい。新しい手も悪くないが,新しい手は探したり習熟するのに時間がかかる。すでにある有用なものを活かす方が早く,安全で成功率も高い。

すでにある変化(例外)を活かす意味

そして,例外を活かすということは,Clが自分の大切な望みに貢献してきたのが,他ならぬ自分自身であることを厚く知るということだ。このことが強くClをエンパワーする。自分を頼りにできることは,安心して自由に生きていけることにつながる。

例外を活かすことは,コストや効果はもちろん,心理支援における中核的な意味がある。

ドミノの最初の一枚を倒す

静かな水面に小石を投げると波紋が広がる(リップルエフェクト)。ソリューションの支援はこの小石のようなもので,ドミノの最初の一枚を倒すことに取り組む。
「小さな変化は大きな変化を」というと階段を想起しやすいが,ソリューションのそれはドミノのことである。スモールステップを否定するものではないが,波及効果に着目する。ソリューションが家族療法であることがここからも垣間見える。

行き詰った状態において,最初の光はどれほどインパクトがあり波紋を広げるだろう。困難ケースでは支援者も圧倒される。全てどうにかしようと思うと動けなくなる。ドミノの最初の一枚を倒すと考えることは支援者の助けにもなる。

ソリューションはブリーフセラピーであり,長時間かけて全て手伝うことは志向しない。その代わりに最初の一枚を確実にできるだけ早く倒すことに尽力する。

手堅く,良循環を作る

Clはディスエンパワーされた状態で訪れることが多い。次の一歩が失敗すれば,さらにエネルギーが下がるが,ソリューションには成功率の高い次の一歩を精査する具体的な方法もある(スケーリング・クエスチョンを活用したウェルフォームド・ゴールについての話しあい)。この精査ができることは支援者の安心にもなるだろう。

次の一歩は成功することが求められる。手堅くDo moreで。
支援は流れを好循環にしてなんぼである。

4.ソリューションはどう動くのか

では最後にセッションレベルでどう動くのか,ソリューションの基本の面接展開をご説明しよう。

解決構築の基本的段階(De Jong & Berg, 2012/2016)

最も有名なソリューションの教科書である,『解決のための面接技法第4版—ソリューション・フォーカストアプローチの手引き』(De Jong & Berg, 2012/2016)では解決構築の基本的段階として以下が示されている。

  • 問題の描写
  • ウェルフォームド・ゴールを作る
  • 例外を探す
  • 面接の終わりのフィードバック
  • クライアントの進歩を評価する

日本でもこれにならった説明が多いが,初学者にはシンプルすぎて理解するのが難しいように思う。少なくとも私はそうだった。シンプルな方がいいとは思うが,基本ならばソリューションで外せないはずの「解決像を描く」ステップは見える形で位置づけられる方がいいだろう。おそらく「ウェルフォームド・ゴールを作る」というステップに解決像を描くことは含まれるということだと思うが……。

またDe Jong & Berg(2012/2016)の基本的段階において「ウェルフォームド・ゴールを作る」段階がおかれた位置にも戸惑った。西欧と比べてゴールセッティング的な話しあいに不慣れな日本では,ウェルフォームド・ゴール作りを面接を開始して間もない時点で行うのはタフだ。

表3(再掲)ウェルフォームド・ゴールの条件

Clが望みかつClにとって重要なこと
最終結果ではなく,最初の小さな兆し
問題の不在ではなく,その代わりの行動
現実的で達成しやすい一歩

※田中(2020),黒沢(2024)を元に作成

ウェルフォームド・ゴール作りは,次の一歩について考えるということだ。後編で詳述するが,Clは前に進むのが難しいからこそ困っている。解決強要にしないためには十分なウォーミングアップが欠かせない。
Clが対話を通して,例外(すでにある解決)とリソースが豊かにあることを具体的に知り,それが今後の助けにもなることを予感し,自然に未来への期待感が抱けるような,心が温まった状態でウェルフォームド・ゴール作りを行う方が安全だ。

また解決像をウェルフォームド・ゴールまでシェイプすることを焦ると,肝心の解決像を十分描くことが手薄になりかねない。解決像を具体的にありありとディテールまでイメージすることの治療的意味を考えるとこれは避けたい。
Clに役立つことが第一であり,別にソリューションらしい支援でなくてもいいのだが,解決像を描くことはソリューションの強みだ。例外を拡げることならナラティヴ・セラピーもしていることだ。少なくとも基本として提示する際は,ソリューション独自の強みを活かしやすい形の方がいいのではないか。

またDe Jong & Berg(2012/2016)の基本的段階ではウェルフォームド・ゴール作りの手順が見えない。ゴールセッティングに不慣れな文化的背景を考えると,概要だけでも見えた方がと思う。
実はDe Jong & Berg(2012/2016)では基本的段階を述べた章とは別の章で,スケーリング・クエスチョンの活用例として,ウェルフォームド・ゴール作りについて触れられている。日本の実践においてもウェルフォームド・ゴール作りはスケーリング・クエスチョンを活用して行うことが多い。

ソリューションの基本の面接構造(黒沢,2024)

以上のような事情を踏まえ,黒沢(2024)は次のような基本を示している。解決像を描く段階(Ⅱ.)を面接前半に,ウェルフォームド・ゴール作りにあたる段階(Ⅳ.)をフィードバック(Ⅴ.)の直前に配置するものだ。

【初回面接】

Ⅰ.傾聴しClの認識を学ぶ:面接がどんなふうに役に立ったらいいか?
…質問(定番):「今日は,どのようなことでいらっしゃいましたか?」など

Ⅱ.Clが望む解決像を描く:もっとも望んでいることは?どんな違いがあればいいか?
…質問(定番):「ミラクル・クエスチョン」など

Ⅲ.すでにできていることで助けになることを見出す
…質問(定番):「例外」を探す質問,成功の責任追及など

Ⅳ.一歩進んだ状態,進歩の小さな兆候を知る
…質問(定番):「スケーリング・クエスチョン」など

Ⅴ.承認・肯定的評価と提案(フィードバック・メッセージ)
…コンプリメントと提案

【2回目以降の面接】

・すでに起きている進歩の兆候は何か?
…質問(定番):「何がよくなったか?(What’s better?)」

黒沢(2024)の示す基本は,面接前半で解決像を描く対話を落ち着いてやりやすい。そして面接後半においてClが十分ウォーミングアップできてから,一歩進んだ状態(ウェルフォームド・ゴール)についてスケーリングを使って話しあうものになっている。こうするとフィードバックへの流れもスムーズで,面接最後の展開としてもまとまりがいい。

後編に続く〉

+ 記事

伊藤弥生(いとう・やよい)
所属:久留米大学文学部心理学科
資格:公認心理師・臨床心理士
主な著書:伊藤弥生(2022)未来のポジションから考える思春期へのブリーフ的支援.In:黒沢幸子・赤津玲子・木場律志編:思春期のブリーフセラピー こころとからだの心理臨床.日本評論社.
伊藤弥生(2007)不妊治療における心理臨床にみる女性たち.In:園田雅代・平木典子・下山晴彦編:女性の発達臨床心理学.金剛出版.
趣味:ゆるめの「NO FASHION,NO LIFE」です。メガネにわりと凝ってます。

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