広場┃書籍紹介『ワーキングメモリと人間の知性』(大阪大学出版会,2025年)

苧阪満里子 編『ワーキングメモリと人間の知性』(大阪大学出版会,2025年)

苧阪満里子 編『ワーキングメモリと人間の知性』(大阪大学出版会,2025年)

定価 2,420円(税込) 四六判 並製 214頁 ISBN978-4-87259-649-6

内容説明(出版社HPより)

買い物に行く途中で知人に会っておしゃべりをしていたら、何を買いに行くつもりだったか忘れてしまった―
以前は同時進行で手早く何品も料理をつくることができていたのに、最近なんだか段取りが悪くなってしまった―
上司から突然頼まれた急ぎの仕事を済ませて自分のデスクに戻ったら、それまで何をしていたのだったかわからなくなってしまった―
こんな経験はないだろうか。日常生活は、目標とする行動のために必要なことがらをわずかな間だけ覚えておかなければならない場面がたくさんある。そこで力を発揮しているのがワーキングメモリ、いわば人間の知性の要なのだ。ワーキングメモリには厳しい容量制約があり、個人差もある。こうした特徴が、現代の若者の多くに認められる読解力の低下や高齢者の認知能力の低下によるもの忘れを引き起こしている。私たちの生活に大きな影響を及ぼすワーキングメモリの仕組みと働きを解き明かし、ワーキングメモリのトレーニングの効果、知能や遺伝的要因との関係について、最新の知見を紹介する。人間の生成記憶であるワーキングメモリが担う知性と生成AIの違いについても解説する。

主な目次〉

まえがき

第1章 ワーキングメモリ(working memory)とは何だろうか
1.日常行動とワーキングメモリ 
2.短期記憶と長期記憶 
3.バドリーのワーキングメモリのモデル 
4.ワーキングメモリの個人差 
5.リーディングスパンテスト 
6.ワーキングメモリの個人差とは
7.ワーキングメモリの発達 
まとめ 

第2章 ワーキングメモリの脳内基盤
1.ワーキングメモリはどのような脳の基盤により支えられているのだろうか 
2.RST実施中の脳のはたらき 
3.注意のフォーカス 
4.脳のネットワーク 
5.ワーキングメモリの個人差と安静時の脳ネットワーク 
6.ワーキングメモリの個人差と課題遂行時の脳ネットワーク 
7.加齢によるネットワークの変化 
8.社会脳と認知脳 

第3章 ワーキングメモリトレーニングと知的活動  
1.ワーキングメモリと知的活動のかかわり 
2.知能とワーキングメモリのトレーニング 
3.ワーキングメモリを上手く使う 

第4章 知性の可塑性を支えるワーキングメモリ:学習する心の働き
1.ワーキングメモリと学習 
2.学習を支えるワーキングメモリの働き 
3.学習によって支えられるワーキングメモリ 
4.知性の可塑性 

第5章 神経ネットワークが創発するワーキングメモリ:
   脳はどのようにワーキングメモリを実現しているのか
1.私たちの行動は目標を志向している 
2.ワーキングメモリを表現する前頭前野
3.ワーキングメモリにおける情報の抽象化と前頭前野 
4.創発性と複雑性の理論 
5.スモールワールドネットワークとその特徴 
6.脳内のスモールワールドネットワーク 
7.ワーキングメモリを支える機能的神経ネットワーク 
8.神経ネットワークの自己組織化が創発するワーキングメモリ 

第6章 ワーキングメモリがつくる意識
1.ワーキングメモリと意識 
2.AIとワーキングメモリは意識をもてるか? 

あとがき/著者紹介 
苧阪満里子 編『ワーキングメモリと人間の知性』(大阪大学出版会,2025年)

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