【特集 カップル・セラピー】#03 再婚カップルへのカップル・セラピー|大西真美


大西真美(杏林大学)

シンリンラボ 第42号(2026年9月号)
Clinical Psychology Laboratory, No.42 (2026, Sep.) 

皆さんの身近に「再婚」の夫婦や家族はいるだろうか。「再婚」と聞いて,どのような家族を思い浮かべるだろうか。2024年の統計調査によると,1年間に結婚した夫婦のうち,24.2%が「夫妻とも再婚又はどちらか一方が再婚」であり,結婚する人の約1/4が再婚という状況はここ20年近く続いている(厚生労働省,2024)。つまり再婚の夫婦や家族は意外と身近になっている可能性がある。

今回は再婚カップルへのカップル・セラピーについて,再婚家族に関するこれまでの研究と筆者の経験をもとに,①信頼関係の構築,②子どもがいる場合の課題,③カップルセラピーによる支援,の3点について取り上げる。

1.信頼関係の構築

再婚カップルは,初婚カップルと違い,どちらかもしくは両方がすでに結婚,そしてパートナーとの別れを経験している。パートナーとの別れが,離別なのか,そしてそれは自発的だったか否か,あるいは死別によるものかによって,喪失の大きさは異なるだろう。そして,前の配偶者への愛着や,その関係から生じた問題が解決されているかどうかは,次の新しい関係に関わるという研究もある(Sager et al., 1983; Hartin, 1990)。

離婚や死別から間もない再婚では,まだ喪失感を抱えていることもあり,そうした気持ちと向き合うことを避けるために,次のパートナーとの関係をすぐに開始することがある。早急な再婚は,お互いの期待や価値観を十分にすり合わせていないため,一緒に暮らしてみて問題となることがある。信頼関係が構築できず,互いへの不満や怒りが溜まったり,どちらかが無理をしたりして,関係が長く続かないこともある。

また最初の結婚を終わらせる前に,浮気や不倫という形で始まる場合もある。そういったケースでは,相手からの信頼を失い,子どもとの定期的な接触を失ったり,他者からの否定的な評価を受けたりしている場合もある。そして再婚に伴って要した犠牲を正当化しようと,再婚カップルには大きなプレッシャーがかかることもある(Elliott, 1997)。

こうした事情でなくとも,再婚する方のなかには「また失敗するのでは」という不安や「次こそ安心できる関係を築きたい」という気持ちを抱えていることがある。こうした気持ちも含めて,結婚に対してお互いが持っている期待や価値観について,すり合わせしていくことが重要である。お互いの生活について,どれだけ折り合いをつけて,新しい生活をスタートさせることができるか,きちんと話し合うことが求められる。

カップル・セラピーでは,カップルの年齢,子どもの有無,経済状況,精神的健康,社会的サポートなどの背景情報とともに,こうしたお互いへの期待や欲求,そして再婚の時期や経緯についても把握することが重要である。こうしたことを安全に話し合えるようカップルの関係を支えることが求められる。

2.子どもがいる場合の課題

再婚家庭の中でも,再婚の前にすでに子どもがいる場合にはステップファミリーと呼ばれる。ステップファミリーとは,大人のカップルができる前に,少なくとも一組の親子が存在している家族のことである。互いに子どものいない夫婦であれば,パートナーの死別や離別を通してパートナーの喪失を経験していたとしても,新たなパートナーと築いていく再婚は,初婚とそれほど変わらない。しかし,どちらかあるいは双方にすでに子どもがいる場合には,ステップファミリーとなる。夫婦が再婚する際,すでに親子関係が先に存在するため,初婚の家族とは異なる構造と発達過程をたどる。そのためステップファミリーには特有の難しさや課題がみられやすい。

1)実親・継親としての立場の違い 

再婚カップルは,実親(子どもと同居する生物学的親)と継親(実親のパートナー)という立場の違いによって陥りやすい特有な状況がある。ステップファミリーは,すでにある家族(実親子の関係)とそこに新たに加わるメンバー(継親)という立場の違いが生じる。実親は,子どもとの関係,そして新たなパートナーとの間で板挟みになることがある。どちらかを優先すると,どちらかを軽視しているようになり,罪悪感を抱くこともあるだろう。一方,継親はなかなか仲間に入れなかったり,なじめなかったり,また疎外感を抱くこともあるだろう。こうした立場の違いから起こる気持ちは,お互いの状況・そして家族の構造からくることを理解し,そしてお互いの立場の違いを理解し合えるかが重要となる。

特に日本では,「代替モデル/スクラップ&ビルド型」といって,いなくなった元配偶者に代わる存在として継親を新しいパートナーに位置付けることがある(SAJ・野沢,2018)。このモデルでは継親に対して,実親と同じような役割を果たすことを期待する。しかし,ステップファミリーの家族支援を20年以上されている緒倉(2025)によると,継親への親役割の期待は,さらに継親子の関係を難しくさせることがある。むしろ,継親は無理に親になろうとせずに,家族に新たに加わる大人としての新しい関係を築く「継続モデル/連鎖・拡張するネットワーク型」の方が,ステップファミリーという家族への移行がスムーズにいきやすい。

いずれにせよ,ステップファミリーが安定するまでには数年かかると言われ,ステップファミリーになることは一時的なものではなく,プロセスであり,長期的に信頼関係を築いていくことが求められる(Papernow, 1993, 2013)。時間をかけて親密さと安心できる関係を築いていくことで,健やかなステップファミリーへと成長していく。

2)子育て方針の違い 

ステップファミリー特有の構造の中で,実親と継親は子育てにも協力することが求められる。しかし,子育てもまた二人の関係に試練を与える。多くの場合,実親の方が子どもに対して愛情深く,甘くなったり,許容的になったりしやすい。一方,継親は新たな関係の中で親として親役割を取ろうとして,しつけやルールに厳しくなってしまうことがある(Papernow, 2013)。しかし,継親と継子(継親とは血縁のない子ども)の間で信頼関係が十分に築かれていない段階で,継親が厳しくふるまうと,継子はただ継親を怖れて服従するか,より反抗的になりかねない。こうした状況を防ぐために,継親と継子の信頼関係が構築されるまでは,しつけなどは実親が中心的な役割を担い,継親はそれをサポートする立場でいる方がよいとされている。そして継親は,信頼できる身近な大人として継子との関係づくりが優先される。

3)継親と継子の関係づくり 

再婚する親にとっては,再婚は新たなステップであり,喜ばしいものである。しかし,子どもにとっては,実親と子どもで築いてきた安定した環境や関係性に大きな変化をもたらす。家族の役割や習慣にも変化を引き起こし,場合によっては喪失感をもたらすかもしれない。親の再婚を経験する子どもたちは複雑な感情を体験する(Ahrons, 2007;野沢・菊池,2014)。

そのため,子どもとすぐにいい関係が築けない場合においても,時間をかけて取り組むことが必要である。子どもの適応のために,再婚カップルは夫婦関係を大切にしながらも,子どもの安心感や生活の安定を確保するなど,家族全体の状況に応じて優先順位を柔軟に調整することが求められる。

「代替モデル/スクラップ&ビルド型」になりやすい日本では,継親を新しい「お父さん」「お母さん」と紹介し,子どもにそのように呼ばせることもある。年齢の小さい子どもであれば,受け入れることもあるかもしれないが,子どもによってはまだよく知らない大人を「お父さん」「お母さん」と呼ぶことに抵抗感を持つ(野沢・菊池,2014;きむら,2023)。そのため,子どもが継親をどのように呼ぶかについては,子どもの気持ちに配慮し,慎重に吟味することが必要である。

4)元配偶者との共同養育

日本では,2026年4月より選択的共同親権の制度も始まり,子どもとの関係を維持したいと考える別居親も増えてきている。そうした状況において,再婚カップルは,子どもの養育,親子交流の引き渡し,養育費の支払いなど,引き続き元配偶者と関わることに対処しなければならない。そして,その連絡頻度や内容が現在のパートナーに不安や嫉妬を与えることもある。子どもの利益を最優先にしながら,連絡の目的や方法について夫婦間で共通理解を持ち,必要以上に誤解を生まないよう配慮することが求められる。

親族との付き合い方においても,再婚後は新たなパートナーの親族と自分の親族という二つの親族関係を調整する必要がある。特に,前婚で築いた親族との交流を継続する場合や,子どもが祖父母との交流を続ける場合には,現在の家族とのバランスを考慮しなければならない。また,新しいパートナーが親族との付き合い方に戸惑いを感じることもあり,家族としてどの程度関わるかを夫婦で話し合うことが重要である。

5)家族や個人の間にある境界(バウンダリー)

バウンダリーとは,家族や個人の間にある心理的・社会的な境界線を指し,お互いの役割や距離感,優先順位を適切に保つことを意味する(Minuchin, 1974)。再婚家庭では,すでにある家族と新しい家族メンバーが共存するため,バウンダリーが曖昧になると葛藤が生じやすい。

再婚してまもない時期では,日常の生活においても,お互いのバウンダリーやテリトリーが問題になることがある。食事の好みや家の片付けなど,家族生活の小さなことから突然の不具合が生じる。こうした問題は時を経て,毎日の習慣や規則,家族の決まりごととして,通常のパターンが築かれていく。しかしなかには,家族メンバーの一方にとっては大事な決まり事が,もう一方にとっては不快で心を乱すように感じることもあるかもしれない。こうした一つ一つのトラブルに対して,家族は忍耐強く取り組み,互いへの理解を深めながら学んでいくことが求められる。ステップファミリーの支援を専門とするペーパーナウPapernow(2013)によると,ステップファミリーは異なる国から来た人が一緒になるようなもので,違いという海をうまく航海することが求められる。こうした経験を経て,新しい家族の文化が築かれていく。

再婚家庭では,親族,元配偶者,子どもなど複数の人間関係が重なり合うため,適切なバウンダリーを築くことが家族の安定につながる。夫婦が互いの価値観や考え方を共有し,家族としてのルールや役割を明確にすることで,不要な対立を防ぎ,安心できる家庭環境を形成しやすくなる。また家族の境界は,子どもやその他の関係者が自由に行き来できるよう,柔軟で許容的である方がうまくいくこともある(Elliot, 1997)。

6)生活設計や経済面について

お金に関する価値観の相違は,家族に強い影響を与える。初婚夫婦にもあるように,再婚カップルにも葛藤をもたらす。特にステップファミリーでは,家計管理について十分に話し合い,共通のルールを決めることが重要である。前婚の子どもに対する養育費の支払いがある場合は,その内容を夫婦で共有し,家計への影響を踏まえた計画を立てることが大切である。また,結婚前から所有している財産や負債についても,お互いに理解し合い,生活費や貯蓄の管理方法を話し合うことで,将来的な金銭トラブルを防ぐことにつながる。

将来設計や相続についても,長期的なライフプランを夫婦で共有し,計画的に資産形成を進めることで,大きなトラブルを防ぐこともできる。再婚家庭では,前婚・再婚それぞれの子どもが関わる場合もあるため,相続について早い段階から話し合っておくことが重要である。特に,子どもが成人してからの高齢の再婚においては,若いステップファミリーの問題と同じようなことが起こるのだが,とりわけ経済的な問題が大きく影響することがある。遺産相続だけでなく,介護を誰が担うのか,こういった問題については必要に応じて専門家に相談することで,家族間のトラブルを予防し,安心して生活できる基盤を整えることができる。またこうした問題を防ぐために,高齢のカップルのなかには,あえて籍を入れないケースなどもみられる。

3.カップル・セラピーでの支援

カップル・セラピーでは,まずお互いに,現在困っていることについて具体的に話し合ってもらい,その上で二人それぞれの結婚歴や家族背景などを整理していく。これまでの互いの経験や考えを共有していくことは信頼関係を構築する上で重要になる。

再婚カップルの問題が,ステップファミリーにまつわる問題であれば,ステップファミリーについての理解を深めてもらうため,それぞれの立場による困難や大変さに共感しながら情報提供を行う。ステップファミリーに関しては,専門書(Papernow, 2013, 2015;SAJ・野沢,2018;きむら,2023)やステップファミリーを支援する団体(ステップファミリー・アソシエーション・オブ・ジャパン;SAJ)のホームページなどを紹介することもある。

再婚カップルがコミュニケーションに問題を抱えている場合には,お互いのコミュニケーションのパターンを見直し,コミュニケーション・スキルなどを用いてお互いのニーズを伝え合う練習や問題を解決するためのやり取りを支援する。特に,意見が異なり対立が起きた際の話し合い方について取り上げる。

さらに,再婚カップルの中には,どちらかに傷つきやトラウマを抱えている場合がある。ステップファミリーが抱えやすい問題についてこれまで何度も話し合い,相手の立場や考えを理解することができたとしても,なかなか変化が難しい時には,トラウマの影響について検討する。過去のトラウマが影響している場合,そうした経験による傷つきや苦しみへの共感や気づきを与えるだけで問題の解決に向かうこともある。しかし,トラウマの影響が深刻で,感情に圧倒されてしまい,話し合うことが難しい場合には,トラウマ治療の専門家に紹介することもある。再婚カップルは,様々な困難を乗り越えるために,否定的な感情の表出にも寛容に対応できる能力も問われやすい。そのため,カップルでの作業を取り組む前に,個人セッションやセラピーを行うことが必要な場合もある。そしてある程度,感情をコントロールできるようになったら,カップルの問題も扱いやすくなるだろう。

最後に,代替モデルになりやすい日本では性役割の固定観念が根強く,女性は継母であっても,パートナーの子どもに対する養育の責任を負うよう求められたり,また男性は継家族において権威やパワーを保持しようとして,他の家族メンバーは継父の指示に従うことを求められたりしやすい。しかし,いずれの場合も,それまでの関係が希薄であることを考えれば,それは難しく,時には不可能なこともある。再婚カップルは,伝統的な性役割の固定観念から脱却し,男性と女性のニーズ,権利,貢献を等しく尊重する姿勢が大切になる。こうした性役割観に変化することによって,複雑な関係の組み合わせを持つステップファミリーにおいても,より柔軟でユニークな継続モデルの家族へと移行しやすくなるだろう。

ステップファミリーには,独自の強さと弱さが混在する。そのため,忍耐強く,時間をかけてお互いへの理解を深めていくことで,より豊かで愛情深く,そして幸福な関係を築いていくことができると期待している。

文  献
  • Ahrons, C. R.(2007)Family ties after divorce: Long-term implications for children. Family Process, 46 (1); 53-65.
  • Elliott, R.(1997)Therapy with Remarried Couples: A Multitheoretical Perspective. Australian and New Zealand Journal of Family Therapy, 18 (4); 181–193.
  • Hartin, W. W.(1990)Re-Marriage: Some Issues for Clients and Therapists. Australian and New Zealand Journal of Family Therapy, 11 (1); 36–42.
  • きむらひとみ(2023)ステップファミリーの子どもとしての私の物語.金剛出版.
  • 厚生労働省(2024)人口動態統計.https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/houkoku24/dl/02.pdf
  • Minuchin, S.(1974)Families and Family Therapy. Harvard University press.(山根常男監訳(1983)家族と家族療法.誠信書房.)
  • 野沢慎司・菊地真理(2014)若年成人継子が語る継親子関係の多様性―ステップファミリーにおける継親の役割と継子の適応.明治学院大学社会学部付属研究所年報,44; 69-87.
  • 緒倉珠巳(2025)ステップファミリーへの支援.精神療法,51 (6); 739-744.
  • Papernow, P. L.(1993)Becoming a Stepfamily: Patterns of Development in Remarried Families. Gestalt Press.
  • Papernow, P. L.(2013)Surviving and Thriving in Stepfamily Relationships: What Works and What Doesn’t. Routledge.(中村伸一・大西真美監訳(2015)ステップファミリーをいかに生き,育むか―うまくいくこと,いかないこと.金剛出版.)
  • Sager, C. J., Brown, H. S., Crohn, H., Engel, T., Rodstein, R., & Walker, L.(1983)Treating the Remarried Family. Brunner/Mazel.
  • SAJ・野沢慎司編(2018)ステップファミリーのきほんをまなぶ―離婚・再婚と子どもたち.金剛出版.
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大西真美( おおにし・まみ)
杏林大学
資格:公認心理師・臨床心理士・家族心理士
主な著書:『離婚を経験する親子を支える心理教育プログラムFAIT』(共著,新曜社,2023)『家族心理学ハンドブック』(共著,金子書房,2019)
趣味:フラダンス,自然散策,猫との時間

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