野末武義(明治学院大学)
シンリンラボ 第42号(2026年9月号)
Clinical Psychology Laboratory, No.42 (2026, Sep.)
1980年代に日本に紹介された家族療法は,親子の問題はもちろんのこと,夫婦・カップルの問題にも取り組んできた。しかし,心理臨床の世界全体から見れば,主たる支援の対象は個人であり,家族ましてや夫婦・カップルの問題は,多くの臨床家にとって主要な関心事ではなかった。2020年に始まったコロナ禍以降,DV,虐待の問題を中心に夫婦・カップルの問題が急増し,様々な臨床現場に問題が持ち込まれるようになり,夫婦・カップルを対象とした私設相談機関も急増している。さらに2026年4月からの共同親権導入により,夫婦・カップル問題への対応は喫緊の課題となっている。
この40年あまりの間,家族療法に関する著書,論文,翻訳書は多数発行されているものの,カップル・セラピーに関するものは非常に少ない。しかしここ数年,EFTやCBTなど個人療法を基盤としたカップル・セラピーの翻訳本等が発行されるようになり,研修会やワークショップも行われるようになってきた。
編集部から筆者に依頼されたのは,我が国における家族療法を基盤としたカップル・セラピーの取り組みについて紹介することであった。カップルをめぐる問題は多岐にわたり,限られた特集ページですべてを取り上げることはできない。そこで今回は,①我が国における家族療法を基盤としたカップル・セラピーについて概観した上で,②家族ライフサイクルの大きな節目である子育て期の夫婦へのカップル・セラピー,③全婚姻件数の中でもその割合が増加している再婚カップルへの支援,④今後日本での導入が期待される離婚の岐路に立つカップルへのディサーメント・カウンセリング,⑤さらには家族療法ならではのセラピストトレーニングとして,人としてのセラピスト養成モデルを取り上げることとした。カップル・セラピーを実践している人から初学者まで,多くの人たちに少しでも役に立つような特集になることを願っている。
野末武義(のずえ・たけよし)
明治学院大学心理学部心理学科教授,IPI統合的心理療法研究所長
ご資格:臨床心理士,公認心理師,家族心理士
主な著書:『夫婦・カップルのためのアサーション』(金子書房),『家族心理学―家族システムの発達と心理的援助 第2版』(共編,有斐閣)
趣味:音楽鑑賞(Fusion・Jazz),ドライブ,釣り










