【特集 アディクション臨床の最先端】#01 カウンセリングはAIに勝てるのだろうか──依存症臨床の場にいて思うこと|三原聡子


三原聡子(久里浜医療センター)

シンリンラボ 第40号(2026年7月号)
Clinical Psychology Laboratory, No.40 (2026, Jul.) 

1.受容的・共感的なAI

ある日,入院中のアルコール依存症の女性の個室にカウンセリングのため伺うと,パソコンとスマートフォンを使って何やら真剣に作業していた。何をしているのか尋ねると,「主治医の先生にどう言えば外出を許可してもらえるか,AIチャットボットAとBに聞いているところ」とのことだった。チャットボットの種類によって同じ質問でも回答が微妙に異なるため,比較検討しているという。当院では,退院後に通う予定である地元の自助グループや,就労移行支援施設,回復支援施設へのお試し参加など,回復のための必要性があることであれば,入院中も比較的自由に外出,外泊ができる。しかし彼女は,長年,応援しているアーティストのライブやイベント,そこに参加するための美容皮膚科への受診や歯のホワイトニング,美容院など,入院中のプログラムを休んでまで外出・外泊する理由をうまく説明しないと主治医から反対されてしまいそうな用事をいくつも抱えていたのだ。

ADHDも併せ持つ彼女は,「今までは今日はどの服を着ていくか,どれを買うか,次に何をすべきかなど,いちいち引っかかって行動に移るのが大変だった。でも今は全部AIに聞くことができるので,生活がスムーズに流れるようになった」と語った。実際に目の前でAIに相談してみせてくれたが,彼女は自分の家族構成や周囲の人の性格まで覚えさせており,AIはどの相談にも彼女の性格や生活に合わせて親切丁寧に回答していた。何よりも,AIは非常に「受容的かつ共感的」であった。

数年前,ゲーム行動症の高校生とのカウンセリングで将来の職業について話していた際,「学校でAIに奪われない職業につくよう指導された。だからカウンセラーになりたい」と言われたことがある。そんな理由でカウンセラーを志望する若者が出てきたことに驚くとともに,カウンセラーの職業はしばらくAIに奪われないのだろうと思っていた。しかし,今や状況は変わりつつある。同じような経験をされた心理職の方も多いのではないだろうか。

実際,AIチャットボットがまもなく心理療法を席巻すると警鐘を鳴らす研究者もいる。Jurblumら(2024)は,フロイトから現代の研究に至るまで,心理療法に関するすべての言葉を訓練し,記憶に収めている人工知能セラピスト(APT)が作り出されるのも非現実的な話ではないとしている。さらに,APTは,クライエントの言語内容や表情に加え,細かい声の変調,瞳孔の拡大,瞬きの頻度などから,人間のセラピストを超えてクライエントの感情を読み取る可能性を秘めていると指摘している。また,Allen(2025)は,「どんな機械も私に代わらない」とする心理臨床家の見解は,チャットボットの力への無知と,自らの能力への傲慢さであると述べている。そして,これからの心理療法家は,チャットボットが苦手とする分野――より重篤な患者への支援,集団精神療法,家族療法――を訓練・再訓練する必要があると主張している。

チャットボットが苦手とする分野が本当にそれらに限られるのかは議論の余地があると思うが,AIによる心理支援との共存を真面目に検討する段階に来ているのではないだろうか。

2.AIチャットボットはカウンセリングの敵なのだろうか

これまで依存症からの回復は,現実の人との関わりの中で進むとされてきた。AIチャットボットによるカウンセリングは,私たちが大切にしてきた基本を覆してくるように感じられるため,否定したい気持ちに駆られる。しかし,さまざまな理由から現実の支援につながることに抵抗を感じる人が,AIに相談し,それをきっかけに回復への道を踏み出すケースは,今後さらに増えるかもしれない。回復への最初の一歩を踏み出せない多くの人の背中を押すという意味では,AIを敵視する必要はないように思える。

実際,違法性やスティグマ,貧困などによって支援にアクセスしづらく,問題が深刻化しやすい物質依存に対して,チャットボットを用いた研究や支援が始まっている(Comuladaら,2026;Deckerら,2026)。Moniz-Lewisら(2025)は,アルコール使用障害に対するAI活用のレビューで,AIはエビデンスに基づく治療の効果とアクセス性を向上させる可能性があると述べつつ,データの安全性・プライバシー,高リスク集団での有効性には懸念が残るとしている。今後,改良が進めば,治療を受けている人が10%未満というアルコール使用障害者への「トリートメントギャップ」を埋める一つの手段になり得るのかもしれない。

もちろん,自己肯定感が低い依存症の方がAIの誤った誘導に従ってしまったり,AIが自殺幇助的な回答をしてしまうといった危険性には十分注意が必要である。実際,自己肯定感が低い人ほどチャットボットに依存しやすく,ネガティブな影響を受けやすいという研究もある(Yaoら,2025)。Jurblumら(2024)は,AIによるカウンセリングは適切に設計・規制されなければ,謝った誘導や不適応的な対処行動を強化する可能性があり,訓練をうけた心理療法士による監督と十分な品質管理が必要であると述べている。今後,チャットボットカウンセリングの適用や品質管理といったガイドラインについて,我々心理職も提言していく必要があるのかもしれない。

次に,AIチャットボット使用の弊害の一つとして想定されている,AIチャットボットへの依存について考えてみたい。

3.AIチャットボットへの依存

AIチャットボットへの依存は現在さまざまに議論されている。しかし,AIチャットボットは現在のところ正式には依存性があると認められていない。その作成時には現在ほどAIチャットボットが発達・流通していなかったICD-11への改訂時には,SNSや動画についてはその依存性について議論があがったものの,さまざまあるインターネットサービスの中で依存性が認められたのはゲームのみであった。その理由は,依存症の定義である「行きすぎた行動が続き,問題が生じている」ことに加え,前頭前野機能の低下や報酬系反応の乏しさなど,脳機能の変化に関するエビデンスが十分にあるとされたインターネット上のサービスが,その時点ではゲームだけだったためである。

Ciudad-Fernandezら(2025)も,依存症と定義するには否定的結果,制御の低下,心理的苦痛,機能障害の証拠が必要であり,「ChatGPT依存」という概念には疑問を呈している。前述のアルコール依存症の女性のように,日常生活に支障を生じさせず,むしろ生活を営むためにAIを活用できている段階では依存とはいえない。

久里浜医療センターでは2011年からインターネット依存専門外来を開設し,ゲームだけでなく動画やSNSなど多様なインターネット上のサービスへの依存で来院する方にお会いしてきたが,AI依存を主訴とする受診者はまだいない。しかし,オンライン上で二次創作を読むことにはまっていた方の中に,オンライン小説の二次創作をAIに依頼し,自分の好きなキャラクターが思い通りに動くストーリーを読み続けて3日徹夜した,ドーパミンが出た,と語る方も出始めている。AIに依存性があるかどうかは慎重な検討が必要であるものの,利用方法が未知数であるAIにおいては,今後,問題を生じるような依存性のある利用方法が生まれ得る可能性を秘めているといえるだろう。

この時,どこからが「問題が生じている」とするのかが,インターネット依存では難しいところである。アルコール依存症では離脱症状や肝臓の数値など,身体的な悪影響が比較的分かりやすいが,インターネット依存では,ある親御さんにとっては子どもが楽しく学校に行っていても,ゲーム使用によって勉強時間が減り成績が下がってきたことが大問題であったりする。当院では,通院を続けていただくかどうかに関して,学校や職場に行けているかどうかを一つの基準にしている。学校や職場に行けているようであれば,長期休みまで,例えば他の活動を増やすようにしながら様子を見ましょうということになる。ただ,学校や職場に行けていても,多額の課金があったり,暴言・暴力が見られる場合には通院を継続していただく。

では,支援につながった先で,人間のセラピストにできることは何だろうか。

4.「健常者」にも「障害者」にも入れない依存症者

依存症のクライエントの回復に伴走していると,さまざまな壁に直面する。依存症者は福祉サービスの中でも少数派であり,その中でも少数派の女性では,「ちょうどよい」サービスに出会いにくい。

女性アルコール依存症者への支援の乏しさの問題は以前から指摘されている。Ait-Daoudら(2019)は,依存症のサービスや研究は伝統的に男性にあわせて調整されたり,女性特有のニーズを考慮されず設計されてきたが,女性は男性とは異なる方法で薬物を使用し,反応するのであり,生物学的,社会的,文化的,環境的要因を考慮した,女性のニーズに応える包括的なプログラムが必要と述べている。加えて,Motykaら(2022)は,先行研究のレビューから,女性の薬物使用者に対する強い偏見が助けを求める障壁となっていることを指摘している。そして,サポートグループに参加してプロセスを続けること自体が,彼女らの劣等感,疎外感,スディグマ感を増幅させる可能性があると述べている。また,男性とは異なる依存症のダイナミクス(原因,ペース,結果,感情)を背景に持つジェンダーに配慮した治療プログラムが必要であり,女性の具体的な問題に併せて治療プロセスを調整することが重要であると述べている。薬物乱用問題を抱える女性への支援強化と改善の要求がようやくなされはじめているところである。

女性を受け入れてくれるところが少ないグループホームに入居希望を出すと,「アルコール依存症は受け入れていない」と断られた方もいる。お弁当を作るB型作業所で料理をしたところ,手際が良すぎて「周りに合わせてゆっくりやって下さい」と注意された方もいる。退院後のあるアルコール依存症の女性は,グループホームや作業所での疎外感から「アルコール依存症って健常者にも障害者にも入れないんだと思った」とつぶやいていた。

私自身,久里浜医療センターに入職した頃には,アルコール依存症からの回復には,「断酒の三本柱(通院・服薬・自助グループ)が何より大切」と教えられ,当初はそれを信じて勧め続けていた。しかしたくさんの依存症者の方に出会う中で,複数のクライエントから,「自分がなくて自己評価が低いから,集団に入ると認められたくて頑張りすぎてしまう。それをやめるのが私の課題。だからグループとは距離をとって細々とつながりたい」と言われ,「病院は3本柱を勧めるけれど,私に合うと思う?」と問われた。私は目の前の依存症者一人ひとりに合わせず「あるべき回復の道」を押しつけていたことに気づいた。

ある人には自助グループが役立ち,ある人にはエビデンスのある治療が,ある人には恋人が,ある人にはパワーストーンが回復の支えになっている。自分がどう感じているのかわからず,周囲に合わせて生き延びてきた多くの女性アルコール依存症者にとって,「自分にとってのちょうどよさ」を選び取ること自体が回復に意味を持つ。

すべての依存症者に均一のサービスを当てはめ,「回復のためにはこのレールに乗る以外に道はありません」と促すのは,非支援的であるばかりか害になり得る。

5.さまざまな社会資源を使って社会に入っていったケース

自己評価や自尊感情が長年にわたり傷ついている依存症の方が,自立して生活を営めるようになること,社会の一員になれることは,自信を回復させてくれることでもあり,現実の人生が良いものであると感じられる基礎になるものでもある。ゲームやインターネットの世界に逃避している方の多くが,このままでいいと思っていることは極めて少ない。ただ現実の人生が良いものになるということがどういうことなのか,どうしたらそうなれるのかを知らないということが多い。かといって,こちらも彼らがどうしたら現実の人生が良いものであると感じられるのか,わからない状態でお会いしてゆく。人生を変えたいけれどずっとこのままでいたい,現実を楽しくしたいけれど,現実なんて怖くて見たくないという両価的な気持ちをともに感じながら,時折,さまざまな選択肢がある事を伝えながら,引きこもったり突き進んだり転んだりする彼らのペースに伴走していく。また,回復においては,心理職一人のカウンセリングだけでできることは少なく,さまざまな支援者がそれぞれの立場で支援していくことで進んでゆくものであることを実感している。

ケース:中学2年生 男子

主訴:小学5年生から不登校。家に引きこもってずっとゲームをしている。

両親は本人が1歳の時に離婚し,母親と母方祖父と3人暮らし。母が介護職をしながら家計を支えていた。祖父は,本人の小学校時代から,テストの点が悪いと罵り,食事を残すと真冬でも家から本人を閉め出すような人だった。母と祖父の仲も悪く,常に二人の顔色を窺いながら生活していた。学校でいじめを受けたことをきっかけに,小学5年から不登校となる。部屋にこもって一日中,ゲームをして過ごし,食事も1日1食,一人でとる生活。中学に入っても生活は変わらず,痩せ細った本人の身体を心配した母が遠方の当院に本人を連れてこられた。

骨密度の低下や低栄養が認められ,生活リズムの改善のため当院入院となった。色白で背が高く,極端に痩せ,言動がゆっくりであり,はじめは同年代の入院患者さんたちにあまりなじめず,辛そうな表情が多かった。しばらくすると,アルコール依存症やギャンブル障害の大人の患者さんたちがいろいろ話かけてくれるようになり表情が和らいでいった。

8月,当院で実施しているインターネット依存治療キャンプに参加した。8泊9日のキャンプの中盤,グループに分かれて野外炊事をしていた際に,音と,光と,匂いに過敏な彼は,睡眠不足と疲労も重なり,耳を塞いで固まってしまうことがあった。退院後,デイケアに来るようになり,スピードは遅いものの,同世代の集団の中で落ち着いて過ごせるようになってきた。

中学卒業後の進路について,進学しない場合や,進学する場合の様々な形態の高校について一緒に検討した。その中から本人が遠方の全寮制高校を選び入学した。やっていけるのか心配したが,高校生活では友だちも,好きな女の子もでき,成長してゆく姿が見られた。長期休みになるとカウンセリングに来て近況報告と高卒後の進路について話し合った。大学へ進学するか専門学校へ進学するか就労移行支援に通うか悩んだ末,大学入学。学生寮に入る。レポート前には必ず徹夜になったり,長期休みには引きこもったりしながらも,ゼミの先生や学生相談室などで話を聞いてもらいなんとか大学を卒業した。

障害者就労を考え,2カ所の就労移行支援を体験したがあわず,実家に戻る。実家に戻るとすぐに祖父から「働かざる者食うべからず」等と怒鳴られ,部屋にバリケードを築いて引きこもる。母のみ来院。無理に踏み込んだり,問い詰めたりせず,おおらかに接する方針で話し合うも「食事もあまりとらず痩せ細っていく本人が心配」と母親も揺れる。

引きこもってから1年後,受診の約束をきっかけに部屋から出てきて来院。カウンセリングでは引きこもった経緯やその間の生活を話してくれる。就労移行支援が合わなかったという話をされたため,おなじ就労移行支援でも場所によって雰囲気が違うことや,入院して障害年金などの手続きを進め,グループホームに入って就労移行支援や作業所等に通っている人もいるといった話をした。本人が生活を立直したいと入院。

入院中,体力をつけるとともに,PSWにも入っていただき,さまざまな手続きを進め,作業所や依存症回復者施設,就労移行支援等を見学,自分にあった進路をカウンセリングで話し合いながら検討し,グループホームに退院していった。その後,就労移行支援に通い,好きだった鉄道関連の仕事に就いている。

6.カウンセリングはAIに勝てるのだろうか

AIは膨大な情報から,最適解を見出すことができる。しかし,同じ依存症という病を抱えていても,その背景や歩んできた道は千差万別である。どの支援も万能ではない。大多数にとっての最適解であるサービスがある人にとってはあわなかったり,一人のクライエントでも回復の過程で,今は認知行動療法がもっとも役に立ち,次の段階では自助グループが役に立つといったように,必要とする支援が変化していったり,最適解に進むほどますますつらい現実に向き合わなければならなくなったりするのが依存症からの回復である。

つまり,最適解にあわせることができない非合理的な気持ちに寄り添い,多くの情報から導かれた最適解ではなく,その人自身の気持ちに耳を傾け,その人に合った方法を一緒に悩み考えることが,カウンセリングの役割なのかもしれない。

そのためにも,基本に立ち返り,アルコール依存症に関する正しい知識を身につけ,多様な社会資源を知り,本人と一緒に本人の心の声に耳を傾けることが求められるのではないだろうか。

今一度,「AIなどに生身の心理師の支援が負けるはずがない」という傲慢さを下ろし,AIを社会資源の一つとして上手に活用できるよう,我々の営みを見直す必要があるだろう。

※本文中に登場するケースはすべて架空のものです。
文  献
  • Ait-Daoud, N., Blevins, D., Khanna, S., et al.(2019)Women and Addiction: An Update. Medical Clinics of North America, 103 (4); 699-711.
  • Allen, F.(2025)Warning: AI chatbots will soon dominate psychotherapy. The British Journal of Psychiatry, 228 (5); 474-478.
  • Ciudad-Fernandez, V., von Hammerstein, C., Billieux, J.(2025)People are not becoming “Alcoholic”: Questioning the “ChatGPT addiction” construct. Addictive Behaviors, 166.
  • Comulada, W. S., Swendeman, D., Ho, Y. X., et al.(2026)Development, Feasibility, Acceptability, and Usability of an Artificial Intelligence-Powered Chatbot(Suzy) to Support Patients in Substance Use Disorder Recovery: Multiphase Study. JMIR Formative Research, 10.
  • Decker, M., Kamm, C., Burgoa, S., et al.(2026)Descriptive content analysis assessment of Chat GPT responses to substance use disorder treatment questions compared to National health guidelines. Drug and Alcohol Dependence, 280.
  • Jurblum, M. & Selzer, R.(2024)Potential promises and perils of Artificial intelligence in psychotherapy-The AI psychotherapist(APT). Sage Journals, 33 (1); 103-105.
  • Motyka, M. A., Al-Imam, A., Haligowska, A., et al. (2022)Helping Women Suffering from Drug Addiction: Needs, Barriers, and Challenges. Environmental Research and Public Health, 19 (21).
  • Moniz-Lewis, D. I. K., Kirourac, M., McCool, M. W., et al.(2025)Perspective on Using Artificial Intelligence in Alcohol Research and Treatment: Opportunities and Ethical Considerations. Alcohol Research, 26; 45 (1).
  • Tao, R., Qi, G., Sheng, D., et al.(2025)Connecting Self-esteem to problematic AI chatbot use. Frontiers of Psychology, 24 (16).
+ 記事

三原聡子(みはら・さとこ)
独立行政法人国立病院機構 久里浜医療センター
資格:公認心理師,臨床心理士,精神保健福祉士
主な著書:『マンガ ケーススタディ ゲーム依存』(法研)
趣味:スパイスカレー作り

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