【特集 アディクション臨床の最先端】#00 はじめに|三原聡子


三原聡子(久里浜医療センター)

シンリンラボ 第40号(2026年7月号)
Clinical Psychology Laboratory, No.40 (2026, Jul.) 

依存症への心理的な理解は時代によって変遷してきています。自らの欲求も管理できない「だらしない人」がなる「自業自得」の病であり,「底つき」体験させ本人がやめたい気持ちにならなければ,回復には至らない(もしくは支援は無意味)とされた時代から,近年になってようやく「やめたい」けど「やめたくない」というアディクションの両価的な心性を認め,そこに働きかけてゆく「動機づけ面接法」や,愛着障害と依存との関連,トラウマに対する自己治療としてのアディクションが注目されるようになっています。

これに伴い,かつては心理職の出番は限られているとされたアディクション支援において,より心理的なアプローチが重要であることが理解され始めてきたといえます。加えて,パパ活の背景に推しの配信者さんへの依存があり,そのさらに背景に親のネグレクトがあったり,市販薬依存の背景に発達的な課題による生きづらさがあるなど,アディクション関連問題は,医療,教育,司法,行政,福祉など,広くさまざまな領域に関連しており,どの分野の心理職にとっても,関わりのある問題であると言えます。

一方で,依存症は社会的な関係性の中で回復すると言われるように,これまで心理的なアプローチとされてきた方法にとどまっていては支援にならない面が見えてきたり,ここまで心理職がやってよいのだろうかと戸惑う場面もあります。さらに,社会における依存症への理解が一向に進んでいないことや,足りていない社会資源が,心理職の視点から見て改めて見えてくることもあります。そのようなさまざまな葛藤の中で,与えられた場で何ができるのか,暗中模索しているのがアディクション支援の最先端にいる心理職ではないかと思います。一方で,これが正しい,こうしなければならないということがないために,自分で考えることができる自由度があることが心理職にとってのアディクション支援の面白さでもあるのはないかと思っています。

このようなアディクション臨床の場面において,今後,心理職はどのようなことができる可能性があるのでしょうか。この特集号では,この分野においてさまざまな立場で模索してきた心理職や,当事者の方など,さまざまな立場の方々にご執筆いただきました。各々の心理職がアディクション臨床においてできることの可能性を広げるヒントとしていただけたらと願っています。

+ 記事

三原聡子(みはら・さとこ)
独立行政法人国立病院機構 久里浜医療センター
資格:公認心理師,臨床心理士,精神保健福祉士
主な著書:『マンガ ケーススタディ ゲーム依存』(法研)
趣味:スパイスカレー作り

目  次

コメントを書く

あなたのコメントを入力してください。
ここにあなたの名前を入力してください

過去記事

イベント案内

新着記事