【特集 カルト問題と心理支援】#00 はじめに|平野 学

平野 学(平野カウンセリングオフィス)
シンリンラボ 第25号(2025年4月号)
Clinical Psychology Laboratory, No.25 (2025, Apr.)

カルト問題に関しては,オウム真理教死刑囚の死刑執行後,メディア等でとりあげられる機会は少なくなっていた。しかし2022年夏の元首相銃撃事件以来,またさまざまに注目されるに至ったわけだが,ここでは心理支援を行なっていく際に役立つよう5本の論考をお届けしたい。

まず私の方で臨床心理職の立場から総論的に記した後,太刀掛俊之氏に「大学における偽装勧誘の現状と課題」と題して,単に相談活動のみならず授業での啓発や学内各所との連携のもと,さまざまな動画の作成と利用等の実践について,特に予防の観点からまとめていただいた。

次に西田公昭氏には「マインド・コントロール理解からのカルト被害対策」といったテーマで,洗脳との違いや誘導するまでの欺瞞的なコミュニケーション,さらには信者を維持・強化する独特な行為についても社会心理学の立場から記していただいた。

さらにAさん(臨床心理士,公認心理師)には「脱会者の心理」と題して,ご自身の体験をふまえ,そこで抱えるさまざまな想い等について,先行研究も絡めつつ詳しくまとめていただいた。

最後に鈴木エイト氏には「カルトの2世問題とメディア報道」といったテーマで,昨今よく話題になっている2世の問題についてさまざまな視点から論じてもらうと共に,報道における問題とそれが果たす役割等について,長年の取り組みをふまえて記していただいた。

今回の一連の論考を通して,この問題への関心と理解が一層深まり,日々の臨床並びに人々への支援等に役立ててもらえると幸いである。

バナー:Gerd AltmannによるPixabayからの画像

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平野 学(ひらの・まなぶ)
平野カウンセリングオフィス
資格:公認心理師,臨床心理士
慶応義塾大学大学院修士終了後,同医学部精神神経科助手。その後,同大学学生相談室並びにSFC心身ウェルネスセンターのカウンセラー。また同大学文学部やSFCの非常勤講師。そして平野カウンセリングオフィスを開設(大塚),東京都公立学校スクールカウンセラー。法テラス・霊感商法等対応ダイヤルアドバイザー。
主な著書:『大学のカルト対策』(分担執筆,北海道大学出版会),『カルトからの脱会と回復のための手引き』(分担執筆,遠見書房),他
役職:(一社)日本臨床心理士会理事,(公社)日本公認心理師協会社員,(一社)日本心理臨床学会前監事,日本脱カルト協会理事,他

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