【特集 神経精神分析】#00 はじめに|岸本寛史

岸本寛史(静岡県立総合病院)
シンリンラボ 第24号(2025年3月号)
Clinical Psychology Laboratory, No.24 (2025, Mar.)

神経心理学者であり精神分析家でもあるマーク・ソームズは,フロイトの精神分析の知見と脳科学の知見を統合すべく,神経精神分析(ニューロサイコアナリシス)という言葉を創出して新たな学問の潮流を生み出しました。臨床解剖学的方法により夢の神経学的基盤を明らかにし,神経心理学の知見を精神分析の観点から読み替えて「心的装置」の神経学的基盤の輪郭を炙り出しています。また,感情神経科学の知見を取り入れ,大脳皮質論の誤謬に気づき,フリストンの計算論的神経科学の知見を取り入れて,意識が生まれるメカニズムにも迫っています。その結果,意識は人工的に作り出すことが可能であるという衝撃的な結論に至っています。

これらの知見を生み出していく背後には,心と体(脳),主観と客観を同等に尊重するという二面的一元論の姿勢があると思われます。本特集では,神経精神分析の誕生から現在に至るまでの流れを紹介すると同時に,その知見を臨床にどう活かしたらよいか,神経精神分析の観点から臨床を見直すとどのようなことが見えてくるか,といった点を中心に論じます。読者が神経精神分析に関心をもつきっかけになることを期待します。

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岸本寛史(きしもと・のりふみ)
静岡県立総合病院
資格:医師
主な著書:『迷走する緩和ケア』『せん妄の緩和ケア』『がんと心理療法のこころみ』(以上,誠信書房),『緩和ケアという物語』(創元社),共著『いたみを抱えた人の話を聞く』(創元社),『がんと嘘と秘密』(遠見書房)

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