【特集 教師を支える】#05 不登校児童生徒を担当する教師を同僚教師が支えるあり方をめぐって|神村栄一・鈴木治弥

神村栄一(新潟大学)・鈴木治弥(新潟市立巻東中学校)
シンリンラボ 第23号(2025年2月号)
Clinical Psychology Laboratory, No.23 (2025, Feb.)

はじめに

わが子が不登校となった時の保護者の動揺は大きい。将来に向けての不安と焦り,時として怒りを伴う。怒りはしばしば,登校しない我が子に向かう。

影響は家族にまで及ぶ。保護者が退職する,勤務を減らす,常勤採用や昇進を断念することも珍しくない。その大半は母親である。その他,夫婦関係や祖父母世代との関係がギクシャクし始めるとか,きょうだいに影響することもある。想定していなかった経済的負担増という追い打ちもある。

メディアの中にあふれる,「不登校でも大丈夫」というメッセージは,子ども本人よりもその保護者にむけられているようだ。

不登校そのものは子どもの「問題行動」とは見なさないとされた。しかし,不登校を身近で支える大人がさまざまな「試練」と向き合うこととなる状況に変わりはない。

さて,不登校の児童生徒を支える学校の教師にとってはどうだろう。本稿の本題はそこにある。児童生徒の中に登校が不安定となる子があれば,担任の負担はかなり大きくなる。

そんな不登校が,小中学校で11年連続で前年度を上回る増加となっている。

1.「チーム学校」は現場でどこまで機能しているか

「チーム学校」という言葉が浸透して久しい。しかし学校現場において,これを実現させるのはそう容易ではない。

「働き方改革」が叫ばれる中,不登校をはじめとする生徒指導上の課題に対して,チームをどう実現すべきかについて,現場の実態に即した提案は未だ不十分である。「船頭多くして」の言葉もあるが,すべての教職員がすべての事例につながるばかりでは機能しない。それは明らかである。

よくあるのが,学期で1,2度,せいぜい月に1度の全教職員参加の事例検討会の開催をもって,「チーム学校」が達成できていると見なすことである。どうしても,刻々と状況が変化する事例への対応として遅れが生じる。忙しい中に時間をかけて準備した発表者のもとに,「ありきたりのスローガン」やら「ベテラン参加者の個人経験に基づくコメント」のメモの山が残るだけ,という結果も多い。

より困難な背景がある事例であるほど,児童生徒の過去と直近の情報を集約し整理しつつ,現在進行中の危うさを支え,見通し(見立て)を持つ必要がある。それは,管理職以下全職員がそろう定例会議で支えられるものではない。むしろ,事例ごとで編成される,コンパクトなチームでの機敏な連携が有効となる。

2.「チーム学校」の建前の中で「担任ひとりが背負う」になりがち

多くの学校において,不登校とこれにつながる不適応への主な対応は,「よほどスタッフ構成に恵まれた教職員体制」,または「よほど担任が困難にある状況」でない限り,クラス担任が引き受ける。登校してくれていれば何でもない諸連絡のひとつひとつが手間となる。さまざまな学校行事や予定,頻繁に生じる予定変更について,休みが続く児童生徒と保護者にどこまでどう伝えるか,個々に判断せねばならない。ネットでの連絡があたりまえになっても,判断に要する負担は同じである。

同じ不登校でもそれぞれ状況とニーズ,繊細さのポイントは異なる。些細な行き違いからトラブルとなることもあり,担任としては緊張の連続となる。

不登校の状態にある子ども本人はさほど気にしないことでも,保護者がナーバスになることが多い。「細かな連絡は不要」ということだったのに「肝心な連絡をもらえなかった」と不満を訴える保護者もいれば,「すべての連絡がほしい」ということだったのに「不登校の子の家庭にこのような資料を事務的によこすとはなんと配慮に欠けることか」と怒り出す保護者もいる。

スクールカウンセラーや外部専門機関との連携まで,窓口担当教員は事務的手続き的につなぐだけで,実質的なやりとりそのものはすべて担任が担う,ということも多い。

3.小中学校でのクラス担任による不登校支援の現状

以下は,10年以上も前に,筆者(神村)がある公立小学校の学校長からうかがったことである。

例えば2つの学級編成となるある学年を,新年度,ベテランと若手で担当してもらうことになった。ひとつは落ち着きのない子が複数いて荒れが懸念されるクラス,もうひとつは比較的落ち着いているが不登校の子がいるクラスである。その状況であればほとんどの学校長は,ベテラン教員の方に,荒れが懸念されるクラスをまかせざるを得ない,ということだった。

小学校担任としての豊富な経験や安定した力量は,「荒れ」への対応にこそ生かされる。不登校には,個人の経験や力量があっても,目に見える成果は期待しにくい,という。

不登校について,「再登校ばかりが支援ではない」「再登校にこだわってはいけない」という認識がしっかり浸透した。しかしそれにより,不登校支援の方向性を事例ごとに見定めるという負荷も上乗せされることとなった。

「本人と保護者の希望に寄り添い」などと安易に口にする人は多いが,その作業がしばしばとても困難である。そしてそれが,主で担当する担任に期待されてしまう。

学校教育に対する,世間の目は相変わらず厳しい。教師としてそれまで身につけ,向上を目指しつつある技量の大半は,子どもたちが学校教室まで登校してきてもらって初めて発揮できることばかりである。

最近では,一方向に知識を伝授するのではなく,主体的な学びを提供する,対話と交流で構成される学びへと舵を切る大きな流れにもある。その要請に応えるための授業の工夫をあれこれ模索し,研修に参加するなどを求められる一方で,「誰一人取り残すことのない教育」の実現を期待されている。

他にも,教師の働き方改革,採用となったその日からマルチな貢献を期待される新採へのサポートなどなど,教師の業務負担の軽減という課題も,待ったなし,の状況である。

4.小学校での不登校対応は危機的状況にある

過去10年あまりの不登校出現率の上昇は,小学校でより顕著である。小中の不登校の増加が始まった2012年度以前の,おおむね横ばいで推移していた不登校出現率の水準と比較すると,最新の統計がある2023年度までに,小学校の不登校出現率は7倍にまで増えた。

今日,小中学校でクラス担任をする,ということは,ほぼ確実に,不登校ないし,その兆しが見え,懸念される児童生徒の対応にかかわる,ということになる。

前年度においてすでにほとんど登校できない状態となっていた子を新担任として引き継いだのだが,本人とは家庭訪問で対面することも難しく,数ヶ月経過してもほとんどその子のイメージを抱けていない,といった状況も増えている。引き継ぎと言われても,何をどう引き継げばよいのかわからず困惑した,という経験を持つ教員は小学校でも増えている。

15年もまえの教育相談,あるいは特別支援にかかわる校内の支援体制作りについての指南書は,もはや役に立たなくなりつつある。その頃に提唱されはじめた「チーム学校」が指し示すあり方についても,さらなる見直し,バージョンアップが求められている。

5.中学校での不登校対応の経験から

不登校出現率が前年度越えの連続で続けてきた過去10年あまりは,ほぼ筆者(鈴木)の,公立中学校の教員としてのキャリアに相当する。

中学校でも学校における不登校の支援は,原則としてクラス担任が担う。中学校で担任として不登校の生徒と保護者への対応を経験することとなったが,それにかかわる負担(時間)も負担感(プレッシャーや迷い)も尋常ではなかった。

「ひとりで抱え込まずに」という言葉をいただくのは時に有り難かった。しかしそれは暗に,「メインでかかわるのは担任ですよ」と念押しされているようにも聞こえた。

実際のところ,別の教職員でも,スクールカウンセラーでも,そのままそっくり,引き受けてくれるわけではない。研修や資料から得る知識と現場の乖離に,しばしば戸惑いを覚えることも多かった。「抱え込む」つもりもそんな力量も端からないとは自覚していたが,どこをどう手伝ってもらえるのかさえ見えにくかった。

管理職,教育相談のベテラン,養護教諭,さまざまなベテランの同僚から助言,支援,励ましやねぎらいを受けたし,その多くはとてもありがたかった。しかし,具体的対応のひとつひとつについての判断は,結局は担任ひとりにまかされていた。

躊躇し立ち止まっていると,なすべきことを何もしていないように見られてしまうとの不安もあった。家庭訪問は,対応しているところをアピールするためにはひとつの「定番」であったが,すべての事例に家庭訪問が有効ということはなかった。ただ最近では,「不登校の子が居れば家庭訪問の継続を」という常識は変わりつつある。

「再登校ばかりが成果ではない」との資料には納得したが,やはり生徒が学校に顔をみせてくれる,教室で授業を受けてくれるといった成果が一番の喜びだった。

幸いなことに,勤務した学校にはめぐまれていた。ここでは詳細を割愛せざるを得ないが,適切なタイミングでありがたい支えを受けることも多かった。その後「不登校をはじめとする教育相談の担当」の分掌を任されることとなり,校内の不登校,不適応の事例のすべてに,担任やその他のスタッフのまとめ役となる役割が増えてきた。

教員がつながる,助言や励ましの言葉を交わす,その機会がある,というだけで担任の負担が目に見えて減ることはない。担任として直接かかわる上で役立つ事例理解がすすむ(情報が整理される),それをいっしょに検討し支えてもらえる,そして生徒が僅かでも元気になっているという兆候が直接間接にうかがえる,ことで励みになる。

二人三脚(しばしば,三人四脚)として支えてきた担任の表情に明るさの回復が確認されると,自身のクラス担任時代の経験とも重なり,喜びとやり甲斐を感じることができた。

そんな経験が,大学院での自らのテーマ,支援者支援,具体的には,不登校の「担任お助け隊」のアイディアにつながった。

6.「担任お助け隊」のアイディアと実践

筆者(鈴木)は現在,勤務校での不登校支援にかかわる「担任お助け隊」の実践とその報告書の作成に取り組んでいる。このネーミングは言うまでもなく,「担任を助けたい」をひっかけたものである。自身の苦労とそれを支えていただいた体験,生徒指導や不登校の担当の校務分掌を引き受けて,支える側の体験を踏まえて浮かんだものである。

まずは校内で,新採,それに近い,勤務経験が最も浅い教員から,ベテラン,管理職にまで,「お助け隊」が担う役割の具体をよく知ってもらうことが大切となる。

筆者の勤務する中学校での実践において,「お助け隊」の構成は,生徒指導主任(筆者)が常任となる。その他は事例ごとに編成され,計2から3名としている。特別支援コーディネーターが2人目として加わることが多い。事例の状況によっては,医療面でのケアができて医療関係の外部連携に有利,女性職員である,ということから養護教諭にお願いすることもある。いたずらにチームの人数を増やさないことを心がけている。打ち合わせの機会を確保しにくくなるのを防ぐためである。クラス担任をもたない学年主任が加わることも多い。

管理職には必要に応じて報告と判断を仰く。スクールカウンセラー,スクールソーシャルワーカーなどの支援を受けることも,もちろん多いし貴重だが,速やかな判断,速やかな対応を継続するため,「お助け隊」のメンバーとしてこれらが加わることはない。

7.「担任お助け隊」による「後方支援」の事例

生徒AはX-1年度中に30日以上の欠席があった生徒である。5月から年度末まで,週に1,2日の欠席が続いた。明らかなのは,運動に関連した行事と,他の生徒の前で発言発表を求められる状況への回避としての欠席,早退,および高頻度の体調不良の訴えであった。

X年度からこのAを,異動してきたばかりのaT1(生徒Aに関わる教師のひとりを意味する表記,以下同じ)が担任として支えることになった。Aの前年度までの担任で他の学年担当に移ったaT2からの引き継ぎに,「お助け隊」のリーダーとして筆者(鈴木)が同席し,そのまま「お助け隊」がaT1をサポートしていくこととなった。

Aについては筆者の他,Aの学年を継続して学年主任としてかかわるaT3の2名で「お助け隊」が構成された。前任であるaT2にも新しい担当があり,当然ながら,そこではさまざまな懸念をかかえた生徒がいる。aT2にはあたらしい学年の対応に集中してもらう必要もあった。

引き継ぎは,1回きりで完了するものではない。生徒との関わりが始まる前の引き継ぎで浮んできた生徒自身とその抱える課題のイメージを,その後の直接的関わりの中で照らし合わせながら洗練させていくと,いくつか,あらためて前任者に確認したくなるところが出てくるものである。

そのやりとりを過不足なく支えるのが,「お助け隊」の重要な役割のひとつとなる。そのためにもできる限り,「お助け隊」の誰かが引き継ぎに同席しておくことは,効果的でむしろトータルで見れば手間が省ける結果となる場合が多い。

例えば,Aのための引き継ぎでは,aT2からaT1にAの個性の説明として,「保護者もそうだが不安が強い」「自己肯定感が低い」という表現が含まれていた。それ自体は妥当な説明であり,aT1としても引き継ぎの場では「意味として」了解できていた。だが,「不安はどのような場面でどのように表出されるのか」「自己肯定感が低いことから生じるAにとっての困難とその際にaT2はじめ関わる教員はどう対応し,それがいかなる成果を残したのか」までは,イメージできていなかった。

事例についての引き継ぎにおいて,「お助け隊」にはファシリテーターとしての役割が重要となる。引き継ぎ後の支援が少しでもなめらかに開始されるよう,引き継ぎ後のフォローの継続も,「お助け隊」に求められる重要なミッションである。

結果として,AについてはaT1を中心とした「通常の生徒に対してよりも少しだけ厚めの配慮」が奏功し,欠席はかなり減少したままで年度末を迎えることができた。

ここで「厚めの配慮」とは具体的には,Aが不安を抱きそうな学習内容があれば早めに,「どのように乗り越えたりかわしたりできそうか」「そのためにどのような対処なり教師側の支援が可能か」などについて,対話したり,連絡ノートでのよりきめ細かなやりとりの継続などが該当した。

Aの支援において,「お助け隊」が直接対応することはなかった。わずかに,Aの保護者とスクールカウンセラーの面接の後のふりかえりを,他の業務で時間調整できなかったaT1に代わり担当することがあったこと,Aについて教科担任としてかかわる教員からアドバイス要請に対応したことくらいであった。

8.「担任お助け隊」による「直接支援」も含まれた事例

生徒Bは,中学校入学まで不登校傾向はなかった生徒である。X-1年度の秋から,教室内でのトラブルが目立つようになった。部活動の参加も不安定となり,学校内で孤立しかけている様子がうかがえた。X年度からはbT1が担任となった。

X年度に進級した直後は,新しく編成されたクラスの中で,比較的落ち着いてきていた。5月末に,ある些細なトラブルでパニックとなることが数回あり,徐々に欠席が増えるという経過をたどった。

BをX-1年度中に担任した教師はX年度には異動となり,年度末の引き継ぎ段階からBをX-1年度からX年度も引き続き支援する学年主任bT2が「お助け隊」に加わった。

もともと,Bには気持ちのコントロールが困難な面もあり,という認識がX-1年度後半からあった。学年主任bT2に加え特別支援コーディネーターbT3が「お助け隊」として対応していくことになった(筆者とあわせ,bT2とbT3の計3名からなる「お助け隊」編成)。

Bの保護者には,やや感情的にBに当たるなど,家庭の事情もあり心理的な余裕を持ちにくいところがうかがえた。X-1年度の担任も対応に苦労し,学年主任であるbT2はその時点から関わっていたのでしばしば保護者への支援を担当した。X年度となって初の家庭訪問も,担任bT1だけでなくbT2も同行し,その後はできるだけ保護者から学校に来校してもらうことを伝えるなど長期の支援を見据えた対応とした。

その中でbT1はB本人と,トラブルについて振り返りつつ,先に予定されている定期試験や学校行事への参加のあり方をいっしょに考える,といったやりとりを進めていった。その経過は定期的に「お助け隊」と共有された。

このような経過には「お助け隊」のひとり,特別支援コーディネーターでもあるbT3の支援が大いに機能した。Bは,国語や数学など,抽象度が高く文字や記号での理解が求められる教科への苦手の反面,理科や社会,実技系などへの取り組みやすさという軽い偏りがありこの点についてのbT3の指摘と配慮の提案は,Bの学校復帰と進路への前向きさの構築に役立った。その後も数回のトラブルはあったが,欠席は減っていった。

筆者は「お助け隊」のリーダーとして,時間は短くともよいので週に2,3回ほどの打ち合わせの調整,Bに対し教科担任として指導に入る教員,Bの利用が多い保健室担当の養護教諭への対応,および管理職への経過報告を中心に担当した。ただし,bT1の他の都合がある時には,BとBの保護者への対応を学年主任はじめ他の学年部担当と調整しつつ引き受けることもあった。

担任にも,別の重要な担当,時に本人の体調や家庭の事情なども生じるので,スムースな業務代行も「お助け隊」の重要な役割である。

bT1からは,「特別な配慮が必要となる生徒への個別支援」をリアルに経験できていることは,自身のキャリアの上で貴重だったと思う,との感想が得られた。

9.コア支援チームによる対応と不登校の予測

小学校では,50名ほどの児童から1名の不登校児童が出現してくるのが今や全国平均となっている。数字の上では,10年前の標準的な中学校なみの,厚い支援体制が必要となったが変化が,急であるためほとんど実現していない。

他にも,登校が安定しない,教室に入れず別室(保健室)登校が多い,母子分離が難しく母親との同伴登校で支えている児童なども増えている。低学年であるほど,フリースクールなど「別の居場所」の利用も困難となるため,本稿の冒頭で述べたような保護者,家族の負担増につながっている。

さまざまな背景と,展開がある不登校事例において,対応の見通しを速やかに得るために大切なことのひとつは,特別な対応が必要となった時点からはもちろん,理想を言えば,必要となったその時点ですでにある程度,児童生徒にあるリスクが整理されていることである。

不登校となる子の多くには,よほど大きな衝撃による事例でなければ,不調の兆しやトラブルのサインがある。平成の終わりから令和にかけて急増した令和型不登校(神村,2024)の大半は,ひとつの大きな衝撃により引き起こされた,と説明されるようなものではない。

パフォーマンスの低下,表情,具体的には,明るさや活発さの低下,仲間関係の変化などがある。過去に長い欠席があることもリスクである。いくつかの課題や状況刺激に渡って回避し続ける傾向が強い,家庭に不登校ひきこもりのモデルとなる方がいる,生活とりわけ睡眠に年齢にふさわしくない不足の状況が続いていること,なども不登校とつながりやすい。

「取り巻く環境によっては,どの児童生徒にも起こり得る」(文部科学省通知,2016)のも事実である。しかし同時に,「不登校という選択をとりやすくなる要因」もあるので,それらが多く重なる子について,リスクは高い,と言える。

おわりに

学校は,子どもたちの個性をとらえる絶好の場でもある。子どもたちが同世代集団の中で,さまざまな教科を学び,行事活動に参加するなかで,何にどれだけ目を輝かせ,どのように取り組み,あるいは戸惑い,悩んだのか。いかなる仲間や大人との間に相性の善し悪しを覚え,慰めを得ていたのか。どのような教材に夢中になり,あるいは集中しきれず回避しがちになったのか,などの個性特性とそれらの成長をうかがうことができる。アセスメントにおいて,圧倒的に保護者よりも有利な立場にあると言える。

登校が困難になる,元気がなくなる,なんらかの症状をかかえる,といったことの背景に,いかなる事情があったのか,近い将来に向けて,何が元気回復のきっかけになると見込めるのか。それをとらえる作業を,学校現場で主となる担任の「ひとり作業」にしないため,適度にコンパクトな「コア支援チーム」が編成されれば,その後の支援はきわめて有利になる。

不登校や学校不適応を「転ぶこと」と表現することを許してもらえるなら,「転んでもただで起きない」と言えるような,支援の継続が期待されている。

注)掲載事例は細部を大幅に改変した。一部に説明のため創作が含まれている。
文  献
  • 神村栄一(2024)教師と支援者のための令和型不登校クイックマニュアル.ぎょうせい.

バナー画像:Rosy / Bad Homburg / GermanyによるPixabayからの画像
Harish SharmaによるPixabayからの画像

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神村栄一(かみむら・えいいち)
新潟大学人文社会科学系教授
資格:公認心理師・臨床心理士・専門行動療法士・博士(心理学)
主な著書:『教師と支援者のための令和型不登校クイックマニュアル』(単著,ぎょうせい,2024),『不登校・ひきこもりのための行動活性化』(単著,金剛出版,2019),『学校でフル活用する認知行動療法』(単著,遠見書房,2014),『認知行動療法[改訂版](放送大学教材)』(共著,NHK出版),『レベルアップしたい実践家のための事例で学ぶ認知行動療法テクニックガイド』(共著,北大路書房,2013)など。
学生時代から40年におよぶ心理支援の実践はすべて,行動療法がベース。「心は細部に宿る」と「エビデンスを尊び頼まず」が座右の銘。「循環論に陥らない行動の科学を基礎とし,サピエンスに関する雑ネタやライフハックなどによる解消改善を要支援の方との協働で探し出す」技術の向上をめざしている。

鈴木治弥(すずき・はるや)
新潟市立巻東中学校
資格:中学校1種数学,高等学校1種数学,中学校2種英語教員免許

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