シンリンラボ 第21号(2024年12月号)
Clinical Psychology Laboratory, No.21 (2024, Dec.)
シンリンラボ読者アンケートより,みなさまのおすすめ本とコメントを掲載します。
精神科医Tomy『精神科医Tomyが教える 40代を後悔せず生きる言葉』(ダイヤモンド社,2023)
分かり易くて含蓄が深い。(井上勝将)
B. F. スキナー(著),坂上貴之・三田地真実(訳)『スキナーの徹底的行動主義ー20の批判に答える』(誠信書房,2022)
本書はAbout Behaviorism(1974)の翻訳である。徹底的行動主義について丁寧に解説されており,訳註によって原書執筆当時の背景も理解しながら読むことができる。(匿名)
大野博之・藤田継道・奇恵英・服巻豊編『動作法の世界』(遠見書房,2024)
動作法が肢体不自由児者の動作改善から入り,リラクセーションに視点が当てられているように思います。成瀬悟策先生の「弛め課題」から「タテ系」以降の主体活動としての「動作」,心理臨床学における心身一元現象として「動作」を求める臨床動作法への考え方の基礎を学べる書籍。(大石敏朗)
ロリ・ゴットリーブ(著),栗木さつき(訳)『だれかに、話を聞いてもらったほうがいいんじゃない?―セラピーに通うセラピストと、彼女の4人の患者に起きたこと』(海と月社,2023)
帯にもあるように、アーヴィン・ヤーロム曰く「こんな本は初めて読んだ」とのこと。「やっかいで愛おしい、私たちの心をめぐる『面接室のドラマ』」です!(Maro.)
桜井図南男『私たちの精神衛生』(時事通信社,1976)
50年ほど前に刊行された一冊の書籍について紹介します。精神科医であった父の書棚にあったこの本を手に取り,以後,私の愛読書となりました。
本書は,もともと福岡県医報に連載されていた精神衛生に関する解説記事を,若干の改訂と追補を施して一冊にまとめたものです。著者のあとがきには,「多忙な医師が仕事を終えて一服しながら気楽に手にとって読めるような内容と長さの記事を書いてみようと思いました。」と記されており,全体を通して文章は平易で,日常生活の体験と内容が自然に結びつくように構成されています。そのため,病的心理に関する諸問題が,読者に「なるほど,そういうことか」と,実感を伴った理解や納得,体験をもたらしてくれる内容となっています。
さらに,桜井先生のお人柄や臨床実践については,著名な精神科医である神田橋條治先生が自身の著書で触れており,また,九州大学名誉教授成瀬悟策先生は,桜井先生とよく共に酒を酌み交わし,楽しい時間を過ごしたと述懐されておられました。こうしたエピソードを知ると,ますます本書に対する興味が湧いてくるのではないでしょうか。古書店で入手可能なようですので,ぜひ一度手に取ってご一読いただければと思います。(緒方二郎)
柏葉幸子『霧のむこうのふしぎな町(新装版)』(講談社青い鳥文庫,2004)
『千と千尋の神隠し』に影響を与えたファンタジー。子どもの夏休みの課題図書にと思って手に取ったら,私がはまってしまった。前思春期の心模様,人間の不思議さや愛おしさが見事に描かれていると思う。(佐川眞太郎)
バナー画像:Alex G. RamosによるPixabayからの画像