【特集 子どもの自殺予防──学校を拠点とした包括的な取組を中心に】#05 フランスにおける自殺予防と若者支援|安發明子

安發明子(日本学術振興会特別研究員)
シンリンラボ 第17号(2024年8月号)
Clinical Psychology Laboratory, No.17 (2024, Aug.)

1.自殺は個人的なものではなく集団によるもの

10万人あたりの未成年の自殺率について,フランスは日本の約1/3である(WHO statistics, 2019)。日本で10-14歳の自殺死亡率は2000年初頭に比べ20年で4-5倍に増えているのに対し,フランスは日本と同じ程度だったのが半減している。15-19歳においては日本が2倍,フランスは半減している。

図1 先進国における10~29歳の年齢階級別にみた自殺死亡率の推移(男女計)
出典:清水康之(2023)こどもの自殺対策への提言─研究と実践を踏まえた緊急策.こども家庭庁
こどもの自殺対策に関する関係省庁連絡会議 第2回 提出資料.

フランスにおいて自殺は個人的なものではなく,集団の機能不全の結果おきている集団のダイナミズムによるものであり,政治の不備から起きる政治的課題としての認識は明確に共有されている。

図2 France bleu 2023.5.26, Le Parisien 2023.6.5

フランスにおいて未成年の自殺は新聞の一面で取り上げられることもあり,大臣が声明を出し,翌週には全国の学校で対応がとられたりする。日本で年間500人を超える未成年の自殺の背景についてどれだけのことが知られているだろうか。

フランスにおいては自殺願望や自傷行為も「心配」な状況に該当するので,児童保護の対象となり,家族への包括的な支援がおこなわれる。子どもの調子の悪さに気づくのは子どもに日常的に関わりがある学校の役割とされ,継続的な支援は公的予算によって運営されている専門機関が担う。13歳から26歳を対象とした若者自身が選びとれる福祉は複数用意されており,どこかで親身で頼りになる専門職に出会えることを目的としている。病院も子どもが地域で継続支援を得られるようケアのコーディネートを担っている。自殺願望や自傷行為や自殺未遂に対し,ソーシャルワークをし,信頼できる専門職との出会いによって自殺を防ごうとしている。

図3 「子どもSOS」とインターネット検索したときに表示される情報の日仏比較
出典:安發明子(2023)一人ひとりに届ける福祉が支える─フランスの子どもの育ちと家族.かもがわ出版,p.67.

2.人を癒すのは人との関わり

筆者はフランスの児童保護施設や不登校支援校などを訪れたとき,心理士が「向かい合って座る」という方法をとらないことに驚いた。児童保護の中心的役割を担うのはエデュケーターという国家資格だが,エデュケーターと心理士の区別がつかないくらい一緒に若者たちとサッカーをしたり旅行に行ったりしている。相手を助けることなどできないと言われている。「一緒にいい思い出をたくさんつくる」なかで「あなたはなりたい自分になれる」というメッセージを伝え続けている。エデュケーターは児童保護分野の各種専門施設の他に在宅教育支援という形で家庭に毎週から毎月通ったり,路上で若者たちに声かけをしたりする。いずれも県の児童保護予算で活動している。人には体・心・社会の3つの側面があるとして,体は医師,心は心理士,社会面や関係性はエデュケーターという役割分担と捉えられている。しかし,特に大切にされているのは「意味のある第三者」「補足的アタッチメント対象」「社会的親」などと呼ばれている若者が関係性を築ける対象がいることである。子どもの周りに専門職を配置し,若者が「頼りにすることができる親身な大人」を選び出会えることで,子どもが安心できる関係性を築き回復することを目指している。

その全体像は以下のようなもので,すべて公的予算で運営され,ボランティアではなく専門職が対応している。若者自身が親の了承を必要とせず選びとれる福祉が無料であることが特徴である。

図4 地域の福祉 10~26歳
出典:安發明子(2024)フランスの親子まるごと支援 第1回 若者が選び取れる福祉『地域保健WEB

どのような考え方をもとに若者のサポートをしているか,社会的養護専門の移動班の児童精神科医ルジュンヌ Lejeune(2023, 2024)の活動をもとに紹介する。移動班とは医師,ソーシャルワーカー,心理士などからなる多職種チームで,施設や里親支援機関に移動し,ニーズがある子どもを対象にエキスパートとして外部から関わりケア体制を整えるというものである。病院にも移動班が設けられているのが近年の傾向で,医師や看護師など包括的な支援の必要性を感じた人が移動班を呼ぶことで,学校や地域との連携を密にすることができるようにしている。

図5 ルジュンヌ Lejeuneさん

ルジュンヌ(2023)によると自殺未遂や自傷,家出や脱走など「問題行動」とされているものは若者が生き延びられるためにとる戦略である。若者自身がその戦略をとらなくて済むように自ら調節できるようになる,自身の内面が穏やかになるよう支えることが大人たちがするべきことである。自宅に暮らしながら,頼りにできる大人がいることで,安心だと感じて暮らせるよう,どのように方法を用意することができるか? 自分の体と,関係性において安心感が育つようにすることがポイントであると言う。

ルジュンヌは人が調子が良くなるためのポイントを3点挙げている(Lejeune, 2024)。

- 自分が所属するコミュニティにおいて自分が役に立っていると感じられる

- 生きることの意味が見出せている

- 希望がある

馬や犬によるセラピーを毎週用意したり,花や木などの自然の中でアクティビティをすること,リズムや感覚に働きかける方法も用意している。しかし,トラウマがある場合は特に,良い関係性が治癒の第一歩であるという。安心できる人間関係の「ネットワークの網」自体が治療になり,それだけで,それ以上の治療は必要なくなることも多くある。アタッチメントの対象となる人が5-8人いると安心して育つことができるが,施設や里親宅に来る子どもは最初アタッチメントの対象となる人が1人,もしくはいなかったりする。若者が関係性の中で体が繰り返し安心感を覚え喜びを感じる経験をできるようにする。エデュケーターや里親などとの関係の中で修復の経験ができ「関係性における自立」を獲得できる。若者は「自分は体の感覚と感情を感じることができる,自分は考えることができ,関係性を継続することができる」ことを体得する。「耐えて生きる」状況から,心理的に自立でき,関係性にエネルギーを傾けられるようになる。支える人が常に隣にいて一緒に乗り越える過程こそが重要になる。「耐えて生きる」状況にある若者は極端な感覚でいることがあり,「自分をコントロールする,自分を傷めつける,自分の感覚や感情を封じ込めるか切り離す」もしくは「他者との関係は築かない,自分だけを信じる,一人きりに感じる,見捨てられたと感じる」という状況を経験している。だからこそ,安全な関係性を繰り返し経験することで「自分が存在しているのを感じる,喜びを感じることができる」という感覚を育て,過去の経験を修正し,脳内で新しい関係性パターンを構築する。まわりの大人にとっては時間と忍耐力が求められるプロセスとなる。

Apprivoiserという言葉が使われるが,これはフランス人にとっては『星の王子様』を思い起こす言葉である。きつねと星の王子様が毎日少しずつ少しずつ距離が近くなり,はじめて「出会う」ことができる。この過程でエデュケーターや児童精神科医などは手紙を使うことが多い。「心配している」というメッセージに始まり「何が好き? 今度こういうことしない?」という相手のリソースを引き出す試み,「今こういう状況だと想像している,こんな心配ごとがあるのではないかと思っているけれど違うだろうか」という相手の状況について言葉をつける提案をする。ルジュンヌ(2024)は「植物が育つように引っ張り上げることはできないのと同じで,その人が必要としていることに自分が参加させてもらう」と表現する。

ルジュンヌ(2023)によると,個人は関係性のネットワークの中に存在する。なので,個人の抱える困難は関係性の中にある。関係性を築くことは「将来が楽しみ」になることを可能にする。「将来が楽しみ」に値しない状況と感じていると,人は「現在のみを生きる」ことになる。不安でいることは辛いからである。「将来を夢見ることができる」状況をつくれば,より良い将来に向けた行動をとるようになる。では,どのように具体的にその条件を用意していくのか。

一度関係性が構築されてからも,若者は見捨てられた経験をもう一度するための行動を起こすことがよくあるため,専門職の粘り強さが非常に重要になる。だからこそチームで,リレーをしながら,支える側もうまくいかなかったり居心地がよくない感覚を表現し整理できるようにする。「関係性における自立」がトラウマ治療の第一段階となる。

その土台の上で,心理的身体的なケアも若者と継続的におこなうことで若者の安定をはかる。ヨガや格闘技,さまざまなスポーツなど呼吸に働きかける活動を定期的に一緒におこなう。また,塗り絵や音楽,体を使ったパーカッションなどリズムに働きかけるアクティビティも自己調整機能に有効である。これら自己調節機能の安定につながる働きかけを十分することで,さらに若者がエネルギーを傾ける学習や活動に道が開ける。ここまで見ても,いかに専門職との関係性の構築が重要で,それに時間がかけられケアそのものとみなされているかがわかる。

ルジュンヌ(2023)はその先にできる有効なケアも複数発表しているが,いずれも関係性の自立,心理的自立があるからこそ成功できるものであることがわかる。例えば「人生のチーム」は,スポーツの経験を通して感じたことを若者と言語化し,「自分にできないと思っていたことができた,チームで助け合った,自分の体を望むように動かすことができた,励ましを感じた,勝って嬉しかった」などと普段意識に上がらないポジティブな体験を体が思い出すようにする。さらに,ストレスや孤立を感じたときに,自分の支えとなる人物を「人生のチーム」として思い浮かべられるようビジュアル化する。「自分を鍛えてくれる人,自分にできると信じて自分の良さを引き出してくれる人,一番励まして応援してくれる人,自分の信頼するゴールキーパーとなってくれる人,自分にとって大事なものを一緒に守ってくれる人,攻撃に参加してくれる人,叶えたいことがあった時に一緒に走ってくれる人」と名前をあげ写真を並べていく。それはまわりに実在する人はもちろんのことアニメの登場人物やスポーツ選手であってもいい。話しながら作るなかで,若者は自分が信頼されたことや誰かと想いを共有した経験を思い出す。自分の中のポジティブな感情や他者からの評価を確認する機会になる。トラウマ経験や断絶経験は継続性を壊すため将来を考えることが難しくなる性質があり,これらの取り組みにより,狭くなっている視野を広げることができる。そして,関係性と自身の世界をケアすることで,若者の頭の中を占めていた歴史ではなく,新しい歴史を築きつつあることを確認することができる。

そしてその先のステップとして若者のグループでの活動がある。グループにいること自体がセラピーになる。お互い再構築することができ,若者は関係性における成功経験をする。暴力被害経験のある若者は,自身と他者が混乱していることが多い。それは,自身の意思や希望と体が経験したことが食い違うため,自身で体をロボットのように操ろうとするようなことがあったり,心理的自立が阻まれる。それを調整する機会になる(Lejeune, 2023)。これも,大人である専門職との成功経験があるからこそ安心して挑戦できるものである。

この一緒に活動をおこない,関係性を構築することをケアとする考え方はフランスの現場で共通して見られるものである。心理士であるルピア Loupiaも直近で自殺クライシスを経験した若者6人を4人の専門職で10日から19日の山歩きに連れていく取り組みを紹介している。(Loupia, 2024)

3.思春期ケアのエキスパートをつくる

思春期ケアのエキスパートを用意していることも重要な点である。若者に接する機関は多い。学校や医療機関や警察などである。「ティーンエイジャーの家(MDA; Maison des Adolescents)」では若者が相談でき,親がサポートを得られ,若者と接している機関がエキスパートに助言を得たり研修を受けることができる。2004年より全国に配置されている。国が定めている「ティーンエイジャーの家」憲章には以下のように書かれている。

「若者,親,専門職,関係機関にとってリソースとなる場をつくる。12歳から26歳の若者の無料健康相談をおこない,健康を支え,予防を担う。医療,心理,社会,教育,司法分野の専門職の協働を改善させる。ティーンエイジャーのニーズや対応についての知識と価値観が共有されるようにする。地域内において若者を中心とする一貫性のあるアクションが実施されていることを保障する。学校など一般的な場所でサポートを十分得られていない若者が利用しやすい工夫をする」

つまり,相談を受けるだけでなく医療面,心理面,教育面,社会面,司法面と包括的サポートを実施し,地域において若者支援の軸として動き,かつアウトリーチもすることが求められていることがわかる。

4.親も子も一人にしない

フランスの専門職が一番工夫していることは親も子も一人にしないことである。すべての子どもに頼りになる親身な大人がいるかはエデュケーターたちが常に気をつけ,増やす努力をしていることだ。それが,「心配」な状況があったときは特に力が入れられる。例えば児童精神科の救急には学校から「生きていても意味がない」という発言や,自傷行為の形跡を理由に子どもたちがが運ばれてくる。パリ市のロベール・デュブレ病院での対応を例にとる。到着時,子どもは1時間にわたり児童精神科医と児童精神科専門の看護師(IPA)2人と話す。そして3週間以内に地域で継続支援の体制を築くと説明する。子どもは3週連続で毎回1時間の診察に通う。最初に1時間しっかり話を聞くことで「この人たちは自分のために行動を起こすつもりがある」と信用してもらうことが重要な点であり,それがあるから脱落することなく続きのケアにつながるという。そして,初回の看護師がそれからも電話対応などすることから,同じ人が継続的にサポートできることもポイントである。

親は5週間「親の会」(PEPS; Psycho-éducation de prevention de suicide)に通い,クライシスの原因,子どもとどう話すか,安全確保の方法,環境の整え方について学び意見交換をする機会がある。そして,1カ月後,3カ月後,6カ月後に看護師がフォローの電話をする。これまで連絡が途絶えたり来なかった人は一人だけであり,その子どもについては児童保護分野に対応の依頼をした。子どもは幸せになりたいと思っているし,親はより良い動きがしたいと思っているので皆とても積極的に通うそうである。

安全確認シート(文末資料)を作成し,親子でクライシスに準備できるようにする。特に,最後の「楽しみにしていること,叶えたい計画」は度々見直し,友達の誕生日会にお呼ばれしていることなど,先の楽しみな見通しが持てるよう準備する。クライシスがあったときにとっさの行動をとらないように,目に見える形で回避の方法を用意しておく。そして親に対しては十分に情報を与えることでエキスパートとして適した行動がとれるように教育する。
子どもたちはいつでも予約なしで外来で必要なときに受診することができ,電話で相談することもできる。電話の場合はオンライン診察という扱いになるので,診療報酬に計上される。夜間も2人が常勤している。

また,児童精神科医の報告によると,児童精神科病棟に入院している子どもの30%が性被害経験があり,性被害経験ありのうち66%が自殺未遂経験がある。そして,性被害経験ありのうち30%が入院中に初めて性被害を告白している(Rappaport, 2021)。つまり,性被害経験者の自殺リスクは高く,かつ,安全な環境で信頼できる関係性ができて初めて告白できることがわかっているため,リスクが感じられる場合は入院が選ばれる。

不登校や,虐待が疑われる際も同じように病院や学校を起点としてケアがコーディネートされ,親子が一人にならないようソーシャルワークによって子どもを気にかける人のネットワークを構築する。

図6 リスク後に子どもの安全を守る仕組み 例:未成年の自殺祈念,自傷行為
出典:安發明子(2023) フランスの未成年⾃殺予防の取り組み『対⼈援助学マガジン』第 55 号 2023 年 12 ⽉.

継続支援として,医療的ニーズが子どもか親にある場合は心理医療センターという児童精神科医か心理士が親子のケアのコーディネートをする機関,社会的なニーズや親子間の葛藤など教育的ニーズがある場合は在宅教育支援というエデュケーターが週1回から月5時間家庭に通い親子を支える方法が選ばれることが多い。これは全国共通で同じ支援が存在する。さらに,専門的サポートがいる場合は併せてその他若者支援が選ばれる。在宅教育支援の様子は『ターラの夢見た家族生活 親子をまるごと支えるフランスの在宅教育支援』を参照されたい。

ティーンエイジャーがケア機関に求めていることに関してはさまざまな研究があるが,医療的知識よりも専門職を信用できることが優先されている点など興味深い。「ティーンエイジャーがケア機関に求めていること」94% 誠実さ,91% 秘密が守られる,87% 医療的知識,85% 話を聞いてくれる,34% 同じ性別,23% 同じ文化,9% 年齢が近い。(Farrant et al., J Paediatric child health, 2004)

5.自分のケアができるようになる

クライシスがあったときの対応よりずっと以前に,幼少期から大事なことについて考え話す機会が度々あることが非常に大事である。あらゆるリスク行動は,「自尊心が低下しているときに,何か出来事があり,頼れる親身な大人がおらず,その困難やリスクについて話したことがないとき」に唯一の解決策としてとられるフランスでは考えられている。頼れる親身な大人についてはすでに書いたが,話す機会についてここで少し紹介する。以下に小学生用の絵本を紹介するが,幼稚園の子どもを対象とした本にも哲学的な内容は多い。友情,家族,成功,嘘や嫉妬などについて考える機会,話す機会があることが自らをケアする機会につながっているのではないだろうか。


「あなたにとっての成功」にチェックをつけましょう

- 職業についている
- 友達がいる
- その分野でトップになる
- 他の人を助ける
- 有名になる
- 親みたいになる
- 楽しいことをする,笑う
- 子どもを育てる
- いつも自分が気に入ったことをする
- 夢を叶える
- お金を稼ぐ
- 情熱を貫く
- 結婚する
- 幸せでいる
- 学問で成功する
- 自分らしくいる
- 世界を旅する
- いろんな人に出会う
- 他:_______________
「皆が同じことで成功したいわけではありません。すべてのことで成功することもできません。大きくなると自分はどんな成功が欲しいかわかるようになります。そして,人生の最後まで新しい成功を実現する機会はあります。自分にとって大事なことを知っているのは自分だけです。自分が成功しているかは,親にも先生にも友達にも社会にも言われるようなことではありません。自分にとっての成功は自分で見つけ判断します」

Boulet G., Chilard A-S., Brenifier O., (2013)Les grandes questions philo 1. bayard jeunesse, pp.44-46


成功にはいろんな価値があって人それぞれであることが書かれているが,同じようにさまざまなテーマについて自ら思考し,他の考え方がたくさんあることを知る機会になっている。

文末にいくつかのツールを紹介する。ホームページにもたくさんあるので是非活用してほしい。フランスの専門職たちはフランスの子どもたちの目に入るところにあちこちに置いておくことで,子どもが気づき,話す機会をつくっている。ツール:akikoawa. com “useful links”

6.選ばれる支援をつくる

「知っていたのに誰も何もしなかった」というのが一番辛いことで,相手が専門職であればなおさら不信感を招く。フランスでは「天使のビンタより,悪魔の頬ずりの方がマシ」と言う。支援者に期待を裏切られると辛い。だからこそ臨機応変に動ける体制づくりは大事である。エデュケーター憲章には「必要なときに必要なだけ時間をかけることができる」と書かれている。

支援機関が若者や家族を迎え,専門職が「我々の提案する支援を受け入れない」と不満を言うことがある。実際には,若者と家族が支援者を受け入れるかどうかであり,選ばれる支援者になること,選ばれる支援をするよう工夫しなければならない。諦めることは機関によるネグレクトである。若者の歴史がその若者が信用する相手を決めるので,支援者の選択肢があることも非常に重要である。

現場で引用される言葉がある。

「あなたが言ったことを人は忘れるだろう。あなたがしたことを人は忘れるだろう。けれど,あなたが与えた感情を人は忘れないだろう」
(Maya Angelou)
文  献
  • 安發明子(2023)フランスの未成年⾃殺予防の取り組み. 対⼈援助学マガジン.
  • 安發明子(2023) 一人ひとりに届ける福祉が支える フランスの子どもの育ちと家族.かもがわ出版.
  • 安發明子(2023) ターラの夢見た家族生活 親子をまるごと支えるフランスの在宅教育支援.サウザンブックス.
  • Boulet G., Chilard A-S., Brenifier O., (2013)Les grandes questions philo 1. bayard jeunesse, pp.44-46
  • 厚生労働省(2022)令和4年版自殺対策白書, 第2章 第3節 学生・生徒等の自殺の分類https://www.mhlw.go.jp/content/r4h-2-3.pdf
  • Lejeune, S.,(2024)Ados en crise, équipe éducative démunie. Assises Nationales de la protection de l’enfance.
  • Lejeune, S.,(2023)Accompagner les jeunes présentant des signes de traumatisme complexe et des troubles de l’attachement en protection de l’enfance: repérage clinique, outils éducatifs et thérapeutiques. FORUM, pp.54-61, Champs Social.
  • Loupia, S.,(2024)Fonctions thérapeutiques de la mise à l’épreuve du corps dans le recours à l’acte. A qui appartient l’enfant, Revue L’autre.
  • Rappaport, C.,(2021)Quels effets des violences sexuelles sur la santé mentale des enfants?. ONPE, 2021.5.13.
  • WHO(2019) Suicide rate estimates, crude, Estimates by country, Global Health Observatory data repository. https://apps.who.int/gho/data/view.main.MHSUICIDE15TO19v
付  録

付録1 暴力被害経験に気づき ケアする 
制作:Dr. Muriel Salmona (Association Mémoire Traumatique et Victimologie 代表)
日本語版 翻訳・制作:安發明子・加藤剛
こども向け「つらい思いをしたとき」
こども向け「つらい思いをしたとき」(動画)

付録2 ヘッズアセスメントツール(子どもの調子を包括的に把握)
監修:日吉和子,翻訳:安發明子 ファイザーヘルスリサーチ振興財団研究助成

付録3 私の安全計画
ADAPTÉDEB.STEVENS & G.K.BROWN (2008,2021) PARN.TENNE & V.TREBOSSEN (2022)
翻訳/安發明⼦,制作協⼒/加藤剛

バナー画像:Image by rawpixel.com on Freepik

+ 記事

・お名前:安發明子(あわ・あきこ)
・所属:日本学術振興会特別研究員,社会福祉主事
・主な著書『一人ひとりに届ける福祉が支える──フランスの子どもの育ちと家族』(かもがわ出版,2023年)
・すべての子どもたちがしあわせな子ども時代を過ごし,チャンスがある社会をめざして活動している。

目  次

コメントを書く

あなたのコメントを入力してください。
ここにあなたの名前を入力してください

過去記事

イベント案内

新着記事