【特集 子どもの自殺予防──学校を拠点とした包括的な取組を中心に】#00 はじめに|窪田由紀

窪田由紀(九州産業大学)
シンリンラボ 第17号(2024年8月号)
Clinical Psychology Laboratory, No.17 (2024, Aug.)

我が国における子どもの自殺予防は,2006年に自殺対策基本法が制定・施行され,自殺対策総合大綱が策定され,同年に文部省(当時)に「児童生徒の自殺予防に向けた取組に関する検討会」が設置されたことから,本格的に取組みが始まった。翌年に「児童生徒の自殺予防に関する調査研究協力者会議」と名称変更された会議体を中心に,教師(学校)を対象とした啓発資料の作成・配布,教師対象の研修会の開催,子どもの自殺の実態把握のための体制整備などが行われてきた。しかしながら国全体の自殺者数が減少傾向に転じた後も,児童生徒は横ばいから微増が続いていたが,コロナ禍で大幅に増加して以後は高止まりからさらなる増加傾向にあり,世界的に見ても極めて深刻な状況にある。今日,子どもの自殺予防はわが国の最優先事項の一つである。

本特集では,子どもの自殺予防について,子どもの自殺の実態を踏まえた国としての施策を確認しながら,諸外国の自殺予防の取組も紹介しつつ,学校を拠点とする包括的な取組について検討を加える。次の世界を担う子どもたちが希望を持って暮らしていける環境を整えることは,今を生きる大人の重要な使命であり,本特集が私たち一人ひとりができること,すべきことを考える機会になることを祈っている。執筆者は,それぞれの立場から子どもの自殺予防にとどまらず,健全な成長発達の支援に関わってこられた研究者・実践家であり,それぞれの論考からそのヒントが得られるものと期待している。

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・名前:窪田由紀(くぼた・ゆき)
・所属:九州産業大学産学共創・研究推進本部 科研費特任研究員(元 人間科学部臨床心理学科教授)
・資格:臨床心理士・公認心理師
・主な著書:窪田由紀著(2009)臨床実践としてのコミュニティアプローチ.金剛出版.
窪田由紀ほか編著(2016)災害に備える心理教育.ミネルヴァ書房.窪田由紀・平石賢二編(2018)学校心理臨床実践.ナカニシヤ出版.
窪田由紀・森田美弥子・氏家達夫監修,河野荘子・清河幸子・金子一史編(2019)危機への心理学的アプローチ.金剛出版.
福岡県臨床心理士会編・窪田由紀編(2020)学校コミュニティへの緊急支援の手引き第3版.金剛出版.
窪田由紀編(2022)危機への心理的支援.ナカニシヤ出版.
窪田由紀・シャルマ直美編(2024)学校における自殺予防教育のすすめ方[改訂版].遠見書房.
・趣味:桜を愛でる,テラスで野菜を育てる,出張先や旅行先で走る

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