黒沢幸子(目白大学/KIDSカウンセリングシステム)
シンリンラボ 第22号(2025年1月号)
Clinical Psychology Laboratory, No.22 (2025, Jan.)
今回の面接段階Ⅴにて,基本の面接段階が完結します。
面接段階Ⅴは,面接段階Ⅰ~Ⅳを終えて,面接の終了前に,クライエントにフィードバック・メッセージ(承認・肯定的評価と提案)を伝え,面接を締めくくる段階です。
1.聞き手から伝え手になるとき
1)攻守の入れ替わり
解決志向の主な技法は質問でした。
面接段階Ⅰ~Ⅳにおいては,クライエントにとって,面接がどう役立てばいいと考えているのか,もっとも望んでいるのはどのような状態なのか,それに助けとなること,すでに持っている力,できていることは何なのか,そして,一歩進んだ状態や続けたらいいこと,役立つことは何かについて,解決志向の(各段階の)質問によって,それらをクライエントが見出していけるように,セラピストは聞き手となり対話を丁寧に続けてきました。
こうしてクライエントから,それらを教えてもらってきたわけです。
面接段階Ⅴでは,攻守が入れ替わり,セラピストは聞き手から伝え手になります。
ここでは,セラピストからクライエントにフィードバックのメッセージを伝えます。
キーワードは,「コンプリメント」と「提案」です。
2)要のコンプリメント
コンプリメントの意味
何より,コンプリメント(称賛や労い)を,丁寧に行います。
クライエントが自分の強み,リソース,良い変化がすでにあることに気づいて,それらを受け入れられるようにすることです。
(セラピストが言ったことを受け入れるということではなく,クライエントが自分のもつリソースに気づき,納得できるようになることです。)
面接への協力に感謝し,クライエントが大切にしていることを肯定し,すでにやれていることや努力,工夫などへの感銘や労いを表します。
単にほめることとは異なる
ですから,単にほめるのではあません。
相手との関係をやりやすいものにするためにほめることとはまったく異なるものです。(まして,リップサービスや,関西弁の「おべんちゃら」とは,そもそも違うものです!)
強化だけではない
また,行動療法での強化と同じものではありません。
コンプリメントによって,その行動がいわば強化されることは,結果的にあります。
しかし,それ以上に,クライエントが自信や希望を感じ,エンパワーされること,望む状態を手に入れられるというモティベーションをもって生活していけるようになることが,コンプリメントの意義なのです。
コンプリメントの時機
コンプリメントは,当初の解決志向ブリーフセラピー・モデルでは,主に面接段階の最後に,クライエントが解決に役立つ自身の能力や経験に注目できるように,用いられていました。
今もその意義は大きいため,面接段階Ⅴに位置づけられていますが,今では,コンプリメントは,面接段階のあらゆる場面で用いられます。
コンプリメントによって,クライエントが希望や自信をより高めることが見出され,それは面接の早い段階から大切だとわかったからです。
3)「介入」ではなく「提案」
解決(をつくる)主体は誰?
解決志向のこの最後の面接段階でのフィードバックは,いわゆる「問題志向」の面接の終了時になされる「介入」とは,異なるものとイメージしてください。
後者の「介入」は,面接の中で得られた問題に関する情報から,専門的なアセスメントと専門理論による介入をセラピストが考え,それを処方するやり方です。
上記のような「介入」が一般的,かつ主流であることはよくわかっています。
ただ,主流なやり方なのに,「介入」が成果につながらない(臨床がうまくいかない)場合が少なくないのは,セラピストのほうがいわば解決(をつくる)主体となってしまうからです。そうなると,クライエントのもつ力をうまく活かせなくなります。
「提案」の姿勢
解決志向では,クライエントが「解決をつくる主体」と考えます。だから,セラピストが「介入」するのではなく,クライエントの主体性を尊重して「提案」をするのです。
面接の最後に攻守交替してセラピストがフィードバックを伝えると言っても,それが他の面接段階のプロセス以上に重要なものでも,セラピストの手腕を見せる面接のクライマックスになるというほどのものでもありません。
面接終了の前に,あらためて,クライエントの変化や解決に役立つと思われることを,(クライエントから聞かせてもらった立場から)整理して,強調して伝えるという姿勢なのです。
そして,クライエントとの話の中から見出された役立つことや続けたらいいことなどをもとに,「提案」を行います。
2.面接のあらゆる場面でのコンプリメント
面接の通奏低音
面接段階Ⅴ:フィードバック・メッセージの構造の詳しい解説に入る前に,面接段階のどこでも用いられるというコンプリメントについて,よく理解していただけるように,ここでしっかりお伝えします。
コンプリメントは,解決志向ブリーフセラピーの通奏低音(その底流にあって,知らない間に全体に影響を与えるもの)なのです。
1)コンプリメントの種類
3種類のコンプリメント
面接におけるコンプリメントには3つの種類があります。
このことからも,コンプリメントが直接「ほめる」ことと同じではないとわかります。

2)間接的コンプリメントが活かされる
間接的コンプリメントの強み
直接的コンプリメントよりも,間接的なコンプリメントのほうが,より好ましいものだと覚えておいてください。質問されることで,クライエントが自ら考えをめぐらし,自分の力を見出していくことが重要だからです。
また,直接的コンプリメントに抵抗を覚えるクライエントにも,間接的な暗示によるコンプリメントは,抵抗が少なく,クライエント自らが自分の力に気づいていく機会を提供します。
質問技法に宿る
面接段階Ⅰの新しい認識や可能性を引き出す質問,Ⅲの例外や成功の責任追及の質問などは,どれも間接的なコンプリメントになります。
さらに,面接段階Ⅱの望む解決の姿やウェルフォームド・ゴールを描く質問,Ⅳの小さな違いを見出す質問も,これから起こる解決(解決をつくる違い)についてクライエントは答えをもっている(考えていける)ことを暗示するものであり,間接的コンプリメントの一翼を担っているといえます。
解決志向の面接には,一貫してコンプリメントの姿勢が流れているわけです。
3)コンプリメントの「芋づる式」作用
面接中にコンプリメントをして,それにクライエントが同意できると,さらに,うまくいったことや得意なことなどをクライエントは話してくれます。
自然な反応としてコンプリメントを伴う相槌を打つと(「わ~,そこはなんとかなったんですね…」等々),クライエントは,また(こんなこともあって…と)過去の成功や良い経験などを思い出して,それを話してくれます。
そして,(少し驚いて)「どうやってそんなことができたんですか?」,また「それが大切だとどうやってわかったのですか?」といった質問をすると,さらにその努力や信念などについて,語ってくれます。
直接・間接の多様なコンプリメントから,まさに「芋づる式」に,クライエントの長所やできていることが引き出されていく対話が展開していきます。
3.面接段階Ⅴ:フィードバック・メッセージ(コンプリメントと提案)
1)休憩の話
本来は,この面接段階Ⅴに入る前に5分から10分の休憩をとり,セラピストはフィードバックのメッセージを作成する時間を取ります。
欧米の家族療法のように,治療チームが,マジックミラーやモニターを通して,その面接を一緒に観察している場合は,治療チームでフィードバック・メッセージを練ることになります。
日本では,一人で5分ほどの休憩をとって行う場合もありますが,多くの場合,休憩を取らずに,面接終盤までにそのポイントを考えて,フィードバックを行っていると思います。かく言う私も,休憩をとらないで面接をしています。
2)フィードバックの構成
フィードバックは,面接の終わりに,コンプリメントから始め,多くの場合,解決に役立つ小さな行動を提案します。
フィードバックは3つの部分から構成されます。
(1)コンプリメント,(2)ブリッジ(提案への橋渡のメッセージ),(3)提案です。
図1のように,(1)➡(2)➡(3)の順で進めます。

図1 フィードバックの構成
(1)【ステップ1】:コンプリメント
フィードバックは,直接的コンプリメントから始めます。
コンプリメントの構成
ⅰ)共感と承認
クライエントを承認することは,当たり前のことのようですが,まず,それを言葉にして伝えることが大切です。困りごとや心配,苦しみなどを抱え,もがきながらも,クライエントなりに精いっぱい生きて(生活して)いること…(それらを軽視したり,否定したりすることなく,)十分に共感的な態度で,それらを労いつつその認識を伝えます。
例)「お子さんを亡くされて,本当につらいなか,子どもは何を望んでいたのかと苦しみながらも,それを考えることで自分を支え,なんとかここまでやってこられたのですね」
ⅱ)妥当化とノーマライズ
そして,クライエントの置かれている状況から考えたら,クライエントの表出した気持ちや,考え方,取ってきた行動は,それなりに妥当なことであり,無理もないことであると,その理解を伝えます。
例)「そのような状況から考えたら,投げやりになって,お酒を飲んで気持ちを紛らわさずにいられなかったのは,無理もないことだった(誰もがそうなってもおかしくない)と思います。それでも,このままではいけない,亡くなった子どもも喜ばないだろうと,葛藤されるのは本当にその通り(当然のこと)だと思います」
ⅲ)肯定的評価
面接を通して,クライエントから教えてもらうことで見出された過去の成功,強み,能力,良い変化,希望など(これらはすべて「リソース」です)について,肯定的評価を伝えます。
望んでいる姿を手に入れるのに役立つクライエントの「リソース」について言及し,クライエントが納得できるようにフィードバックします。
例)「今までひとり親で周囲を頼らず子育てを頑張ってきたこと,ご自身でも言われたように自立心が強い頑張り屋だと私も強く思います。パートでお客さん対応に張り合いがあったこと,体が不自由な実父をなんとかしたいことなど,人を元気づけ支えることがご自身を支える力にもなるのだと感心しました。(関係性の質問によって)亡くなったお子さんが,ママが大好きだと言ったことは,お子さんに愛情が深く伝わっていて,その子育ては十分に誇れるものだったことを教えてくれました。すでに飲酒をやめようと決意していること,ご自身にとって何が最善かをよく知っておられるのですね。…」
なんだかテクニカル?
このように,コンプリメントの構成といった要素的な説明をすると,なんだかテクニカル(技巧的)に感じられて,多少抵抗を感じられる方もいるかもしれません。
しかしながら,どんなにこちらがクライエントのもつ力を感じていても,ベタに「すごいですね」「なんと素晴らしい!」とばかり(テンション高く)伝えても,空回りしてしまうことが少なくありません。
コンプリメントが,結果的に解決の主体であるクライエント自身の回復や改善に役に立ったのかどうかを,虚心坦懐に見届け,省みる必要があります。
ここで紹介したコンプリメントの構成は,クライエントが解決の状態を手に入れるのに寄与するものとして,丁寧に整理された知見なのです。
クライエントの反応を見る
ⅰ)「伝える」ではなく「伝わる」
特に直接的コンプリメントは,「伝える」ことが大事なのではなく,クライエントにそれが「伝わる」(受け入れられる)ことが重要です。
まずは,クライエントがそれを聞いてどんな反応をしているかを観察して,どのように伝わったのかを感じ取る必要があります。
ⅱ)抽象的なコンプリメントの是非
たとえば…(以下のみの表現で,コンプリメントを伝えたとします)
「あなたが素晴らしい力をたくさん持っていることに感心しました。これからもそれらの強みや力を十分活かしてやっていけると思います」
それを言われたクライエントが…
明るい表情でうなずき,「今日の面接を通して,私は,思っているよりできていることがそれなりにあることが,だんだんにわかってきました。気持ちが楽になって,なんとかやれそうだと感じています」
このように反応されたのなら,コンプリメントは伝わったといえるでしょう。
とはいえ,上記のコンプリメントは抽象的であり,フィードバックとして,好ましい表現の例とは言い切れないでしょう。
しかしながら,ここまでの面接のプロセスで,直接的/間接的コンプリメントを折に触れて丁寧に行って,それが少しずつクライエントに受け入れられていたとしたら,フィードバックの段階では,このような抽象的な表現のコンプリメントが,クライエントに自然に受け入れられるものにもなりうるでしょう。
ⅲ)お仕着せのコンプリメント
一方で,同じ上記のコンプリメントに対して,けげんな表情で「う~ん,そうなんですかね…」と腑に落ちない反応が観察されたのなら,コンプリメントにはなっていません。
言われたことが抽象的で,どのような事実に基づいているのかが伝わりません。
(「…上滑りでなんか白々しい…わかってもらえてない…チャラい…」とクライエントは心の中で呟いているかもしれません)
コンプリメントに,救われるのではなく,足をすくわれることになりかねません。
具体的な事実に触れて伝える
コンプリメントは,面接で語られた具体的な内容に触れて事実に基づいて述べることで,クライエントに伝わり(受け入れられ)やすくなります。
そのコンプリメントの例を挙げてみましょう。
(前回連載の事例ユキさんです)
「つらいときにお祖母ちゃんを頼ることができたこと,愛犬と遊んで自分らしさを取り戻したこと,そのほかのエピソードからも,ユキさんは,もっともつらいときに自分にとって何が必要なのかを知っていてそれを行動に移し,自分を癒すことができていたことに驚きました。病院でのつらかった入退院の経験から,それを繰り返すことを自分が望んでいないと知ったのですね。そして,自分でみじめがってばかりでも仕方ないと,自ら気づかれたことに感心しました。友達のインスタを見るのを減らすことも,もうすでにやっているのですね。…(続く)」
(2)【ステップ2】:ブリッジ
ブリッジは,コンプリメントと提案を橋渡しするものです。
提案への理由づけ
提案を,クライエントが納得して前向きに受け入れられるようにする,その理由づけ(論理的根拠を示すこと)の役割をもちます。
ブリッジでは,クライエントの目標,例外,すでにできていること,うまくいっていること,強みや能力,役に立っている考え方などが,その根拠として用いられます。
これらは,【ステップ1】のコンプリメントで伝えた内容と重なりますから,コンプリメントの内容を根拠に橋渡ししていくことになります。
あなたのおっしゃる通り…
ブリッジは,一般的に「あなたのおっしゃる通り…」で始まります。あるいは「~が役立つと考えられていたようでしたので…」といった表現もよく用いられます。
理由づけですから,ここで多少の専門知的知見を織り込むのもよいでしょう。
ブリッジの例として,ユキさんの事例を続けましょう。
「ユキさん,あなたのおっしゃる通り,いい顔して優等生のふりをしたり,自分をみじめがったりする必要はもうありません。そのために,友達のインスタを見るのを減らす,母親と何気ない話をする,午前中に起きる,推しのことを考える。犬とじゃれるといった,ユキさんがすでに自分から行っていることは,どれも役に立っていますね。SNSデトックスや睡眠習慣を整えること,また安心して雑談をし,好きなことに没入して,リラックスすることは,健やかにやりたいことをやる自分を取り戻すのに,とても理にかなっていることばかりです。ですから,私から提案したいことは…」
(3)【ステップ3】:提案
「観察」か「行動」を提案する(図1参照)
提案は,大きく分類すると,観察を促す提案と,行動を促す提案の2つがあります。
基本はDo More
原則は,うまくいっていることを続けること(Do More)を提案します。うまくいっていることであれば,行動はもちろんのこと,クライエントの考え方や気持ちの持ち方,大切にしていることや信念など,それを続ける提案をします。
特に,解決のために自ら行動することを望んでいるクライエントには,すでに見出された役立つ行動を促す提案をします。
観察を提案する場合
それ以外の場合には何か行動するというよりも,観察をする提案をします。例外や続いてくれたらいいことの観察です。
それ以外の場合というのは,たとえば,困っていて何とかしたいけれども,その面接では,何に向けてどうしたらいいかの材料をまだ見出す途上にある場合が挙げられます。
あるいは,たとえば,無理やりな要請を受けて不本意ながら来談している場合や,困りごとはあるけれども,自分ではなく,周囲や他の人が変わる必要があると訴えている場合なども含まれます。
主な提案の種類

ユキさんへの提案
提案の例として,ユキさんの事例を示します。
ここでは,Do more提案,観察提案,初回面接公式課題を伝えています。
(ですから,私から提案したいことは…)「今お伝えした,すでにやっている役立つことをこれからもどれも是非続けていってください。そして,コスプレづくりいいですね。それに先立って,部屋の片づけをすること,そのためにはまずは足の踏み場を作ることですね(笑)。そこで,分別用のゴミ袋と廉価な衣装ケースを手に入れることでしたね。どうやって手に入れます?(お母さんに,ホームセンターでLサイズを3個買ってきてもらう!)では,次回お会いするまでに,今より1平方メートルでも足の踏み場ができているようにやってみてください。よければスマホで写真を見せてくださいね。(笑)」
(面接では,不安発作がまだ起こるときがあるとの情報もあったため)「それと,不安発作が起こらないですんだときや,それに何が役立ったのかについても観察しておいてください。そのほかにも,生活の中で,さらに起こり続けたらいいことも観察して,また教えてくださいね」
小さな一歩の行動提案
ユキさんへの行動提案は,自室に足の踏み場を作ることであり,片付けのためにゴミ袋と衣装ケースを用意することでした。スケーリング・クエスチョンで見出された数字が一つ上がった状態に役立つこと(小さな一歩)がそれでした(前回第7回連載参照)。
問題の大きさに比して,こんな小さな一歩を提案することの役割は,図2のように整理して考えるとわかりやすいでしょう。
「小さな変化が大きな変化につながる」のです。
ユキさんの場合は,自傷行為をして引きこもっていましたので,図2の,右側の「問題に圧倒され身動きが取れないと感じる人」に当てはまります。

図2 小さな一歩を提案する役割
ちなみに,ユキさんのこの小さな一歩は,大きな変化につながりました。
その後7,8回の面接が終結する頃にバイトを始めました。そこで興味のある分野に出会い,何年か後に一念発起して大学に入学し,その専門職となり今は元気に働いています。
解決の姿をそのまま演じる
一方,小さな一歩から始めないように見える提案もあります。
解決のふりをする(プリテンド・ミラクル・ハプンド)提案ですが,ミラクル・クエスチョンなどの質問により,解決の1日の様子が鮮明に描けていて,クライエントが新たな行動をする意欲が高い場合には,その解決の1日をそのまま演じてもらう(解決した状態のふりをする)ように提案します。これは,大きなことをいきなりやる印象をもつかもしれません。
しかし,これも,望む状態が具体的になっているなら,そのふりをするのは大きな労力が必要ない小さな一歩に過ぎないのです。その証拠に,クライエントはこれをきっかけに,驚くほどそのままよくなることが多いのです。
提案の締めくくり
フィードバック・メッセージの最後に,次回の面接を提案して締めくくります。
クライエントと次回また会いたいこと(クライエントがもう来る必要がないと言わない限り),また,そのときにはどんなことが少しでも良くなったかを話してほしいことを伝えます。
「次回,またお会いできればと思います。そのときには,今回の面接以降,少しでもどんなことがよくなったかについてお話ししてくださいね」
また,次回面接の時期をいつにするかについて,クライエントに聞いてみることも一案です。クライエントが最善を知っているという信頼を表すことにつながります。
「次回の面接はいつが一番いいと思われますか?」(もちろんケースに応じてです)
* * * *
さて,次回は,「臨床がうまくなる!」ことに外せないテーマを扱います。
面接が困難な状況になりやすい特徴的な臨床場面,たとえば,強制された来談,他の人が変わらなければダメと訴える状況,無関心や抵抗,よくないことを望む状況などを取りあげて,どう取り組むかを考えます。
その前に,もちろん,この面接段階Ⅰ~Ⅴの後の,2回目以降の面接についても,説明します。
※事例は個人情報に配慮した合成事例であることをお断りします。
文 献
- De Jong, P., & Berg, I. K. (Eds).(2013)Interviewing for Solutions 4th.(桐田弘江・住谷祐子・玉真慎子訳(2016)解決のための面接技法 第4版─ソリューション・フォーカスト・アプローチの手引き.金剛出版.)
- Dolan Y. M.(2023)Solution-focused therapy (The Basics). Routledge.
- Henden, J.(2008)Preventing suicide: The solution focused approach.(河合祐子・松本由起子訳(2020)自殺をとめる解決志向アプローチ─最初の10分間で希望を見出す方法.新曜社.)
- 黒沢幸子(2002)指導援助に役立つスクールカウンセリング・ワークブック.金子書房.
- 黒沢幸子(2015)やさしい思春期臨床─子と親を活かすレッスン.金剛出版.
- 黒沢幸子(2022)未来・解決志向のブリーフセラピーへの招待─タイムマシン心理療法.日本評論社.
- 森俊夫・黒沢幸子(2002)森・黒沢のワークショップで学ぶ解決志向ブリーフセラピー.ほんの森出版.
- 田中ひな子(2020)解決志向アプローチ.In:日本ブリーフサイコセラピー学会編:ブリーフセラピー入門─柔軟で効果的なアプローチに向けて.遠見書房,pp.54-62.
黒沢幸子 (くろさわ・さちこ)
目白大学心理学部心理カウンセリング学科/KIDSカウンセリングシステム
公認心理師・臨床心理士
得意領域:学校臨床心理学,ブリーフセラピー,児童思春期青年期心理臨床/家族療法
日本心理臨床学会,日本ブリーフサイコセラピー学会,日本コミュニティ心理学会等の理事や委員を務める。日本ブリーフサイコセラピー学会学会賞(13号)
内閣官房の依存症対策関連の会議や自治体のいじめ問題関連の協議会等の委員,教育センター,少年鑑別所,児童相談所等のスーパーバイザーや研修講師等を務める。
心理相談援助職向けのブリーフセラピー等の研修歴は25年余に渡る(KIDSカウンセリングシステム)。