黒沢幸子(目白大学/KIDSカウンセリングシステム)
シンリンラボ 第17号(2024年8月号)
Clinical Psychology Laboratory, No.17 (2024, Aug.)
第4回連載,今回から満を持して「解決志向ブリーフセラピー」です(イントロ長すぎちゃったかなー)。今回からでも十分間に合います!
1.解決志向ブリーフセラピーの姿
解決志向の売り
まずは,「解決志向」の売りは? と問われたら……。ぱっと,自由連想,制限時間3分!(順不同)
- 現場で役に立つことを最も大切に考えている。
- 実際にうまくいった関わりの分析から生まれた方法論。
- シンプル,実用的,安全性が高い。
- ブリーフセラピーの4E(効果的・効率的・洗練・倫理的)を体現した援助法。
- 問題に左右されず,汎用性,応用性が高い。
- 対人援助のマスターキー(合鍵)
- 問題探しや犯人探しをせず,できていることと目標の共有により,連携協働を促進。
- 希望とエンパワーメント,良循環を生みだす。
- セラピーや支援への(被支援者の)やる気のあるなしに関係なく,関わるコツがある。
- セラピーの浅いも深いもあなた次第,浅くても深くても役に立てばいい。
(これ,私自身に課したブレインストーミング……)
「問題志向」でなく「解決志向」
「解決志向」はいまやブリーフセラピーの代名詞。世界中で実践と応用がなされています。その特徴は,「問題志向」ではなく,「解決志向」であること。
「解決志向」は,問題や原因にではなく,リソースと望む解決の姿に焦点を当てます。
問題を同定し,無いものや上手くいっていないことに注目して,その原因にこだわるのではなくて,すでにあるものに注目し,どうなっていきたいかについてともに考え,それに役立つ小さな違いを生み出しながら,解決を新たにつくっていく発想です。
リソースと解決像
クライエントの内外にどんなリソース(資源),どんな使えるものがあるのか? 無いものではなくあるものに注目します。リソースは解決をつくる材料です(とはいえ,そのまま放っておいたら宝の持ち腐れ,箪笥の肥やし……)。
そして,望む未来(preferred future)がどのようなものなのかにも焦点を当て,それを問い,解決の姿(solution picture)を,思い描いてもらいます。
たとえば,困っていることからすべて解放されたら,どんな1日を過ごしているでしょうか? 自分がもっとも望む1日はどのように過ごしていますか?(でも,それだけなら,絵にかいた餅……)
リソースに気づき,望む解決の姿を知るだけでも
とはいえ,リソースに気づき,望む解決の姿を知るだけでも,回復していったり,自分がどうすればいいのかにおのずと気づいたりして,歩み出せるようになる方も少なくありません!(だから,聞いてみるものです)
そんなこと,考えもしなかった! という方のなんと多いことか。ご本人も支援者も……。
解決は小さな違いから
望む解決はどのような小さな違いから生まれていくのか? 達成できそうな小さな違いを生む具体的なゴールをクライエントとともに形づくります(肥やしや餅のままではだめですもの)。
それに向けて,すでにある力やリソースを活かして,役立つことを行っていくことで,望む解決や未来を新たにつくっていきます。
不可能なことや手に負えないことではなく,可能なことや変わりうることに焦点を当てる。不可能なこと,手に負えないと思うことは,少なくありません。
そのような中でも,どんなことは少しでも可能性があるのか,どんなことなら少しずつ変わりうるのか,そこに焦点を当てて粘り強く対話を続けて考えていくのです。
2.解決志向ブリーフセラピーはなぜ生まれたのか
過酷な状況下にある人々
スティーブ・ド・シェイザー(Steave de Shazer)とインスー・キム・バーグ(Insoo Kim Berg)らが1978年に米国ミルウォーキーに創設したBFTC(Brief Family Therapy Center)には,当初から,過酷な状況下にある人々が訪れていました。
例えば虐待やドメスティックバイオレンス(DV),様々な嗜癖や依存症をもつ人々などです。また,警察や司法機関の法律的措置でセラピーを受けることを義務づけられて来ている人々もいました。
そのほとんどが,とても前向きになど考えられない,悲観的にならざるを得ないような状況の人々です(「解決志向」にもたれがちなイメージ,たとえばポジティブ・シンキング,楽観的などといった印象とはむしろ真逆です……)。
通常のセラピーでは通用しない
BFTCを訪れた人の多くは,他の治療機関では治療困難とされる人々,治療契約を結んで取り組むことが難しい,また,治療機関を渡り歩いたりドロップアウトしたりしてしまう状況にありました。
通常のセラピーや方法で通用するなら,この人々はBFTCに来なくとも,他機関で十分回復されているはずです。通常のセラピーの方法ではうまくいかないのです。
何が「役に立つ」のか?
BFTCでは,プラグマティズム(実用主義)の姿勢で,目の前のクライエントの回復に何が「役に立つ」のかに焦点を絞りました。
家族療法で普及していたマジックミラーによる観察やビデオ記録から,そこでの膨大な数の面接を検討し,持続的で肯定的な成果に確実に繋がったセラピストやクライエントの言動をチームで検証し続けました(Franklin, et al., 2012)(“観察力”“柔軟性”“独自性”,先入観を廃し“事実を超えない科学的な姿勢”を総動員して)。
偶然の発見の検証が解決志向を生む
BFTCもスタート時点では,まだ「問題志向」でした。
しかし,効果的な面接要因を検討する経緯の中で,まず「例外」(いつも起きることとは違う状態,問題が起こらないですんでいる状況)が発見され(1982年),それを契機に「解決志向」に舵が切られました。
次いで,偶然の対話から「ミラクル・クエスチョン」(問題が生じていない解決の状態)が見出され,解決をつくるのに問題の描写をもはや必要としない,画期的といえる「解決志向」モデルが確立されていったのです。
3.解決志向モデルの哲学
中心哲学の3つの法則
解決志向ブリーフセラピーでは,プラグマティズムの3つの法則から成る「中心哲学」を,文字通り中心に置いています。セラピーのモデル開発をはじめ,あらゆる場面でこの3つの法則を軸にしています。
法則1:うまくいっているなら,変えようとするな
法則2:一度でもうまくいったなら,またそれをせよ
法則3:うまくいかないなら,(何か/何でもいいから)違うことをせよ
(白木,1994)
図1 3つの法則
中心哲学に則って成立した解決志向
BFTCには,他の機関(やり方)ではセラピーがうまくいかない人が,多く訪れていました。まずはうまくいかないなかで,何か違ったことを試したところ(法則3),たまたまうまくいくことが見つかり,なにが役立ったのかを考えて,それをまたやってみます(法則2)。(ここに,「例外」や「ミラクル・クエスチョン」といった,前代未聞のものが登場)。
他の人が行っても,相手を変えても,それがうまくいくなら,それはうまくいっているから変えなくていいこと(法則1)になります。
このようにして,法則1に昇格したものが解決志向のモデルです。
通常のセラピーは法則3
ほとんどのセラピーは,3つの法則のうち,法則3だけで発想され成立するといえるでしょう。セラピーの場合,“何か”に当たるものが,さまざまな理論や技法となります。
うまくいっていないなら,たとえば,流派によって異なりますが,感情の理解(自己一致),洞察,行動の活性化,認知の再構成,リラクセーション,ソマティック(身体的)・アプローチ等々,その“何か”を,今までとは違うこととしてやってみる(処方/介入する)わけです。
法則3は,うまくいっていないことに焦点を当てますから,「問題志向」に典型的な発想ともいえます(もちろん,そのやり方を否定しているわけではありません。これも重要な法則3です)。
良循環を生む
法則3は,悪循環を絶つ発想でもあり,他のブリーフセラピーの流派(たとえば,MRIや戦略派)が主に依拠している法則といえます。
一方,解決志向ブリーフセラピーでは,うまくいっていることに焦点を当て,それを繰り返して続けていくという法則2と1への良循環を目指すことに重点が置かれます。
中心哲学の3つの法則は,セラピーにとどまらず,あらゆる支援や取り組み,日常生活,スーパービジョンやコンサルテーションにも役立つ法則です(この3つの法則を手に入れるだけでも,この連載を読んでいただいた価値があるかも!?)。
4.臨床は実践(プラクティス)だから
どのように働かせるか
臨床は実践(プラクティス)です。実践では,実際の行動や実用的で現実的な視点を重視しなければなりません。理論や概念は大切ですが,実際の状況でどのように働かせるかが,求められます。
解決志向ブリーフセラピーにこだわらず,さまざまなオリエンテーション,流派,理論を背景にしても,実践にどう働かせるかということに役立つ観点をもっていることは,助けになるはずです。
この3つの法則は,臨床がうまくなる(働かせ方についての)中心哲学になりえます。
法則1「うまくいっているなら,変えようとするな」
①うまくいっているのに,変えてしまう…
法則1は,当たり前のことのようですが,うまくいかないことばかり考えていると,何がうまくいっているかは目に入りません。
また,うまくいっていることもあるのに,何か他にうまくいっていないことがあると,自分のやり方はよくないのだ(あるいは,他からよくないと言われる)と,うまくいっている部分まで,変えてしまう。
よくあることです。惜しい!
特に,まじめで素直な心根を持つ若手の心理臨床家であれば,(権威ある筋の)他者(文字媒体を含む)から,面接や関わりを否定的にいわれると(よくない部分を改善することは大切ですが),うまくいっていることまで全否定して変えてしまう,といったことがありがちです(そうなれば,臨床スタイルはボロボロです……)。
②うまくいっていることをまずは続ける
まずは,うまくいっていることは何かに注目し,それを続けることが1番目の法則,つまり基本中の基本(基本のキ)として,ここから始めます。
(どんなことはうまくいっていますか? 面接,特定のクライエントとの経過,職場,仕事,自分の生活,家庭……。独善的ではない眼をもちつつ,うまくいっていること,少しでも成果につながっていること,それはどのようなことかに焦点を当て,それは変えずに続けること! 第三者や周囲の人と検討して客観的な視点でみることも大事です)
法則2:一度でもうまくいったなら,またそれをせよ
①まぐれに意味はあるんか?
法則2も,うまくいかなかったことをまたしようとする人はいないはずですから,これも当たり前のことでしょう。
しかし,2つのことがハードルになります。一つには,「一度でもうまくいった」ことなど,なかなか覚えていません(まぐれ,取るに足らないこと,一度くらいうまくいっても意味がない……)。
もう一つは,仮にそれを覚えていたとしても,またそれを行うためには,その成功要因がわかっていないと,できません(あのとき,ちょっとうまくいったけど,どうやってやったんだろう?……)。法則2を実践するのは意外にも簡単ではありません。
②解決志向の基本にして奥義
「解決志向」に登場した「例外」(いつも起きることとは違う状態,問題が起こらないですんでいる状況)は,いわば一度でもうまくいったことに匹敵します。困難や問題の渦中にあれば,意識はうまくいっていない状況一色になるため,問題は常には起きていないという発見だけでも,大きな救いになることがあります。
「例外」に焦点を当て,それをまた起こせるように,どのようにやったのか? 何が役に立ったのか? を,クライエントに問うて,それをもっと起こせるようにしていきます。
従来あまり簡単にはいかない法則2を,実践場面で可能にしていく対話法が,「解決志向」モデルでもあります。
法則3:うまくいかないなら,(何か/何でもいいから)違うことをせよ
①何がベストかわからない
法則3も,うまくいかないなら変えたほうがいいのは当然ですが,ここにも難しさがあります。うまくいっていないとはわかっていても,何がベター,またはベストなやり方なのかがわからないと,なかなか違うことができません。
そこで,少し乱暴に聞こえるかもしれませんが,何でもいいから,という言葉を括弧に付け足しています。この“柔軟さ”も必要です。
すでに述べたように,この“何か”が,さまざまなセラピーの諸理論/諸技法になり,多様なアプローチがあるといえます。
②ドグマティックになっていないか?
しかしながら,若手の臨床家も中堅の臨床家も,何かの理論などにドグマティックになって(固執/信奉して)いると,“柔軟性”を欠いて,クライエントに合っていない/役に立っていないのに,それが変えられないということも起こりえます。
まして,うまくいかないことを自分の精進の不足ととらえて,なんとかしようともがいているならまだしも(それでも,その間のクライエントの不利益を考えなければいけませんが),うまくいかないことをクライエント側の病理や難しさに帰結させてしまうことは,避けなければなりません。
セラピーがうまくなるのに,どなたも法則1,法則2をまず活かしてください。
また,臨床があまりうまくいっていないという方で,解決志向ブリーフセラピーと縁がなかった方,ちょっと遠ざけていた方は,法則3の“何か”違うことをする,その“何か”に解決志向を取り入れてみてください。
5.解決志向ブリーフセラピーの発想の「前提」
仏像彫って魂入れず?
続いて,解決志向ブリーフセラピーの発想の「前提」に入ります(中心哲学に加えて,まだ発想の前提があるんかい? はよ,技法出さんか~い! はは~,しばしお待ちを~)。
解決志向ブリーフセラピーは,その特徴的な(やや奇抜な?)技法から,学び始める方が多いようです。
しかし,単に技法を学ぶだけでは技法をうまく働かせられず,セラピーはうまくなりません(いわゆる「仏像彫って魂入れず」ってこと……。仏の像と仏の魂,どちらが重要かなんて愚問ですね。発想の「前提」はいわばその魂……決して粗末にはできません)。
発想の「前提」のキーワード
この発想の前提のキーワードは,「変化」・「解決」・「リソース」です。
ブリーフセラピーに共通する6つの基本原則(第3回連載参照)とむろん重なりますが,解決志向でより重視されているものとして,下記の4項目を是非押さえてください(できれば,そらんじていつでも口に出せるくらいに。何しろ発想の「前提」ですから)。
「変化」について
1.変化は絶えず起こっており,必然である。
2.小さな変化は,大きな変化を生み出す。
「解決」について
3.「解決」について知るほうが,問題や原因を把握するより有用である。
「リソース」について
4.人(子ども)は有能で,自身の解決のためのリソース(資源・資質)を必ず持っている。自身の解決の「エキスパート(専門家)」である。
(森・黒沢,2002)
よい成果につながる「前提」
発想の「前提」ですから,正しいか間違っているかの議論は不問です。
このような「前提」をもってクライエント(支援対象)に向き合うほうが,例えばその逆の「前提」をもって接するよりも,よい成果につながるというわけです。
6.発想の「前提」が姿勢を生む
姿勢と型
発想の「前提」がクライエントに向き合う「姿勢」を生みます。
茶道・武道では「型」に精神が宿ると考えられています。「型」を通して精神を伝えるといえます。「型」は「技」にも通じるものです。
もしかしたら,解決志向ブリーフセラピーでは,発想の「前提」がおのずと「姿勢」を形づくり,その姿勢で「技法」を用いることによって,発想の前提がクライエントに伝わる(変化や解決を生む)ことになると考えていいかもしれません。「技法」は,発想の前提や「姿勢」が伴わなければ効かないともいえます。
「変化」への期待
①変化は絶えず起こっており,必然である
この前提は,変化は常に起きている,変化への期待を常に持つ「姿勢」を生みます。
変化なんか(そう簡単に)起こらないと思うことが,私たちの言動に影響し,どこかでクライエントの変化の芽を摘み,変化を阻みます。
日常場面で考えれば,失敗の多い人や子どもに言ってしまう,「また,やったの?」は,「あなたは変わらないね」というメッセージです。何度もそう言われて,変化できる人や子どもは少ないでしょう。
「小さな変化がきっとどこかで起きるだろう,起きてるんじゃないか」という変化への期待があれば小さな変化を見逃さずにすみます。変化への期待が変化を育てます。
朝顔の種
小学1年生の朝顔の観察では,自分の植木鉢に種を植え,毎日水やりをします。何日かが過ぎ,その土が小さくふっくらと盛り上がったら,子どもは「芽が出た~!」と勇んで喜び,さらに大事に育てます。そこに種が埋まっており,芽が出ると信じられているから,芽の出る兆しに気づきます。
これが道端であったら,誰も種が埋まっていると考えないので,世話をすることもなく,小さな芽にも気づかず,踏み荒らしても何のことはありません。そこに芽が出る(変化が起こる)はずはないのですから。そして変化はその通り,起こらないのです。
これは「Believing is Seeing」(信じていれば見えてくる)の姿勢です。
②小さな変化は大きな変化につながる
この前提は,システム論的相互作用の考え方が背景にあります。部分は全体に宿り,全体は部分に宿るともいえます。
簡単に言えば,大きな変化を生み出すために大きな力がいるのではないということ。
「さざ波効果」と言われ,小さな変化をきっかけにして,文字通り波紋が広がるように大きな変化を生んでいく。ドミノ倒しの最初の一枚も小さな変化です。
まず小さな変化をつくることから,始めればいいのです。
(私の臨床実践は,この「前提」に支えられ,救われています。よりよい変化への期待を諦めずにもち,クライエントが小さな変化をつくっていけるように,気負わずに丁寧な対話を続けていきます)
解決の専門家
先ほどの朝顔の“種”は,「リソース」です。
「リソース」の大切さは本連載を通しても何度も言及しています。「リソース」についての発想の「前提」が,解決志向の本質的な「姿勢」をつくってきました。
「すべてのクライエントは,自分達の問題を解決するのに必要なリソース(資源)と強さをもっており,自分達にとって何が良いことかをよく知っており,またそれを望んでいて,彼らなりに精一杯やっている」(Berg & Miller, 1992)
クライエントは自分に役立つリソースをもっているのみならず,「クライエントこそが,自身の解決の“専門家(エキスパート)”である」ということです。
教えてもらう
この「前提」に立てば,どんな問いが生まれるでしょうか。
クライエントが自分の望む解決の姿を手に入れるためにもっているリソース(資源)と強さは何か? クライエントは何を望んでいるのか? クライエント自身にとって何が良いことなのか? クライエントなりにどんなふうに精一杯やっているのか?
これらの問いについて,セラピストは,クライエントから聞かせてもらう,教えてもらうことになります。
知らない(Not knowing)姿勢
教えてもらうという姿勢で,クライエントに向き合うこと,これは「知らない(Not knowing)姿勢」と呼ばれるものです。
クライエントが自分自身の人生の専門家であるという「前提」に立てば,セラピストはもっと詳しく聞かせてほしいという純粋な好奇心と敬意をもってふるまうことになります。
この姿勢は,ナラティヴ・セラピーにおけるコラボレーション(協働)の思想で強調されているものであり,解決志向も同じスタンスです。
セラピストは,このような姿勢でクライエントから教わりながら対話を続けていき,クライエントが望む姿を手に入れられるように,対話による面接を丁寧に組み立てていく専門家となるのです。
これが,「One behind lead」(一歩後ろから導く)という面接スタイルです(De Jong & Berg.2013;黒沢,2020)。
さて,次回第5回からは,この前提と姿勢に基づいて実践する「技法」に入っていきます。
第1回から今回までの連載で述べてきたことは、図2のようにも表されます。
天才肌の非凡な先達の臨床家たちの画期的な実践を、一般的な多くのセラピストが安全に効果性高く使えるようにしたものが、解決志向ブリーフセラピーです。
図2 解決志向ブリーフセラピーの恩恵
文 献
- Berg, I. K., & Miller, S. D.(1992)Working with the problem drinker: A solution focused approach. Norton.(斎藤学監訳,白木孝二・田中ひな子・信田さよ子訳(1995)飲酒問題とその解決─ソリューション・フォーカスト・アプローチ.金剛出版.)
- De Jong, P., & Berg, I. K.(2013)Interviewing for solutions 4th. Brooks/Cole Pub.(桐田弘江・住谷祐子・玉真慎子訳(2016)解決のための面接技法[第4版]─ソリューション・フォーカストアプローチの手引き.金剛出版.)
- Franklin, C., Terry, S., Trepper, E. E., McCollum., & Wallace, J, G.(2012)Solution-focused brief therapy: A handbook of evidence-based practice. Oxford University Press.(長谷川啓三・生田倫子・日本ブリーフセラピー協会訳(2013)解決志向ブリーフセラピーハンドブック─エビデンスに基づく研究と実践.金剛出版.)
- 黒沢幸子(2020)ブリーフセラピーと「問う力・聴く力」.臨床心理学,20(4); 402₋406.
- 森俊夫・黒沢幸子(2002)〈森・黒沢のワークショップで学ぶ〉解決志向ブリーフセラピー.ほんの森出版.
- 白木孝二(1994)BFTC・ミルウォーキー・アプローチ.In:宮田敬一編:ブリーフセラピー入門.金剛出版.pp.102-117.
黒沢幸子 (くろさわ・さちこ)
目白大学心理学部心理カウンセリング学科/KIDSカウンセリングシステム
公認心理師・臨床心理士
得意領域:学校臨床心理学,ブリーフセラピー,児童思春期青年期心理臨床/家族療法
日本心理臨床学会,日本ブリーフサイコセラピー学会,日本コミュニティ心理学会等の理事や委員を務める。日本ブリーフサイコセラピー学会学会賞(13号)
内閣官房の依存症対策関連の会議や自治体のいじめ問題関連の協議会等の委員,教育センター,少年鑑別所,児童相談所等のスーパーバイザーや研修講師等を務める。
心理相談援助職向けのブリーフセラピー等の研修歴は25年余に渡る(KIDSカウンセリングシステム)。