私の臨床現場の魅力(14)医療現場で病いの語りを通して心を支えるということ|吉田三紀 

吉田三紀(地方独立行政法人 市立吹田市民病院)
シンリンラボ 第14号(2024年5月号)
Clinical Psychology Laboratory, No.14 (2024, May)

1.私の所属している臨床現場について

私が所属している市立吹田市民病院は,大阪府の中核都市に指定されている吹田市にある。当院は,大阪府がん診療拠点病院,地域医療支援病院の承認と,大阪府難病医療協力病院の指定を受けており,病床数431床,29診療科からなる急性期医療を担う地域の基幹病院である。職員数は,880人(2022年4月現在)おり,心理職は常勤および非常勤それぞれ1名ずつ在職している。「市民とともに心ある医療を」を基本理念に掲げ,地域の公立病院としての役割を担っている。

2.当院の心理職の業務内容について

当院の心理職の業務は,院内のメンタルヘルスに関すること全般を担っており,多様な業務に取り組んでいる。

1)心理カウンセリング

当院では,外来・入院,外部からの紹介に関係なく,全診療科の患者および家族を対象にしている。疾患も多彩で,身体治療に関わる主治医や看護師へのコンサルテーションを行いながら,さまざまな年齢層のクライエントからの相談を受けて心の側面から患者や家族を支援している。

2)心理検査(神経心理検査)

医療につながる患者の高齢化は進んでおり,疾患の治療を受けるのにインフォームド・コンセントが必要になるが,それらを理解していくための認知機能に問題を持っている人も多い。患者や家族にとって適切な医療を受けるために,認知機能が問題になる場合の神経心理検査が依頼されることが多く,全診療科からの依頼を受けている。

3)職員メンタルヘルス(夜勤専従者のメンタルヘルスを含む)

職員メンタルヘルスについては,力を入れて取り組んでいることである。職員相談や復職支援,ストレスチェック後の高ストレス者面談窓口など,職員メンタルヘルス全般を担っている。さらに,COVID-19感染症者の受け入れなど,最前線にあったため,COVID-19感染症病棟の職員メンタルヘルス対策の強化も取り組んだ。具体的には,定期的にCOVID-19感染症病棟の職員にメンタルヘルスチェックのための質問紙を行い,病院全体で職員の心を守れるように院長や看護局長と共有し連携して,職員の異動などを含めて病院としての支援の検討を行った。その結果,メンタルヘルス不調で退職となった職員はいなかった。

4)医療チーム活動,委員会活動

主に,緩和ケアチームや認知症・せん妄ケアチーム,骨髄移植チーム,臨床倫理委員会やてんかん委員会に心理職として属し,多職種と連携しながら活動している。

5)啓蒙活動

職員向けに相談室だよりを配布したり,看護師に向けた研修を行うなどして,心に関する正確な知識の提供と,日常生活の中で自分自身や周りの人の心に関心を寄せてもらう工夫をこらした活動をしている。

6)実習生への指導などの教育

公認心理師や臨床心理士の取得を目指す大学生や大学院生を対象に,実際の臨床現場を肌で感じてもらう場を提供し,指導・教育を行っている。

3.私の職場の“臨床現場の魅力”について

さまざまな身体疾患を抱えて来院している患者や家族にとって,身体診療科で身体を診察してもらうという,身体が主体の総合病院の現場の中で,“こころ”を考える場や視点を提供できるという点は,何よりも魅力ではないだろうか。普段,身体診療科の治療では用いられることはない夢や描画なども用いて心を理解しようとする試みは,患者や家族だけではなく,治療に関わっている医療スタッフにとって新鮮で,興味関心が寄せられる。

「病いを抱えて生きる」患者や家族を支えるために,職種や診療科の垣根を越えて,互いの専門性を尊重しつつ,多職種チームで協力連携して,心身両面から検討しながら患者や家族と向き合っていくことは,大きな臨床現場の魅力である。

𠮷田三紀(よしだ・みき)
【所属】地方独立行政法人 市立吹田市民病院
【資格】臨床心理士,公認心理師
【主な著書】
「現場と結ぶ教職シリーズ カウンセリングと教育相談」(共著,あいり出版,2012年)
「こころと医療をつなぐー病いとともに生きることを支えるアプローチ」(編著,あいり出版,2015年)など
【社会活動】
総合病院精神医学会 医療者支援委員会 委員(2020年~)
日本サイコオンコロジー学会総会 広報委員(2023年)
サイコオンコロジー学会遺族ケアガイドライン 委員(2023年~)

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